ついでに、箸でつまめる卵について

牛乳とタマゴの科学 (ブルーバックス)作者: 酒井仙吉出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/05/21メディア: 新書この商品を含むブログ (2件) を見る 箸でつまめるほどしっかりしているタマゴ、というのを見るけれども、著者は少なくとも卵白部分については、…

紅茶の淹れ方論争

大英帝国の遺産である茶は、イギリスでその力を維持している。ミルクなしで飲むものもいる。おそらくジャスミンの香りのするアールグレイを選んで、レモンの薄切りを加えて飲むだろう。しかし大多数の人間はミルクを加える(カップにミルクと茶のどちらを先…

ついでに、母乳と乳児の腸内細菌の話

ついでなので、『食物心理学――価値観と欲求の科学』の腸内細菌にまつわるところを読んで、気になったところを。 母乳栄養児の場合、ビタミンK2を合成できないビフィズス菌が全体の99.2%も占めているが、人工栄養児の場合、19.1%に過ぎず、ビタミンK2産生菌…

腸内細菌の話

人間は料理をする・下: 空気と土作者: マイケル・ポーラン,野中香方子出版社/メーカー: エヌティティ出版発売日: 2014/03/13メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 以前から細々と読んでいる『人間は料理をする』の下巻には発酵を扱う…

料理の効用

人間は料理をする・上: 火と水作者: マイケル・ポーラン,野中香方子出版社/メーカー: エヌティティ出版発売日: 2014/03/13メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (6件) を見る (リチャード・ランガムは『火の賜物』*1のなかで)料理の発明…

『和食;日本人の伝統的な食文化』から、気になったところを適当に。その1

すでに先日の日記でも引用しましたが、最近農水省の日本食文化テキストブック『和食;日本人の伝統的な食文化』なるものをちまちまと読んでおります。 事の次第 昨年末ごろに、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたというニュースがありまして、ちょっと…

香辛料の使い方

ヨーロッパ人が十五世紀以降東南アジアにやってきたおもな動機は、スパイスや香木に代表される熱帯の香辛料、金などを手に入れるためである、と説明されることが多い。(略) これまで、現代の使用方法をもとに考えてスパイスその他の香辛料は肉の保存や香り…

はじめて月刊『学校給食』が待ち遠しくなった日

ふだんは適当に流し読みをする*1月刊『学校給食』なのですが、今日手にした3月号は創刊700号記念とかで、学校給食の歴史、献立の歴史を振り返っていて、これがなかなかに面白いものであったのでした。 なのですが、次号の予告を見るに、4月号はもっと期待で…

罰は効果的でない、と行動科学はいう。

うまくやるための強化の原理―飼いネコから配偶者まで作者: カレンプライア,Karen Pryor,河嶋孝,杉山尚子出版社/メーカー: 二瓶社発売日: 1998/06/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 40回この商品を含むブログ (5件) を見る まったく詳しくないので、単…

栄養学とは無関係に、フォースダウン・ギャンブルについて

栄養学とは全く関係ないのですが。オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く作者: トビアス・J・モスコウィッツ,L・ジョン・ワーサイム,望月衛出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2012/06/08メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 1人 クリック…

想像以上に大きかったModernist Cuisine

Modernist Cuisine: The Art and Science of Cooking作者: Nathan Myhrvold,Chris Young,Maxime Bilet,Ryan Matthew Smith出版社/メーカー: Cooking Lab発売日: 2011/03/14メディア: ハードカバー クリック: 37回この商品を含むブログ (2件) を見る いえ、存…

天賦の才がものをいう

「誰でも料理はできるけど」クリストフはフランスの有名なことわざを訳して教えてくれた。「ソース作りには生まれもっての才能が必要なんです」 (『ステーキ!*1』p101) いや確か、別の場所で違う意味に使われていたのを読んだ気がするなあと思って心当た…

霜降りイコールおいしさだ

ステーキ! - 世界一の牛肉を探す旅作者: マーク・シャツカー,野口深雪出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2011/12/17メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 31回この商品を含むブログ (10件) を見る 霜降りイコールおいしさだ。僕がテキサス工科大学で会…

『食事の文明論』の読書メモ4――主食について

まず飯とパンが対立関係にあることが指摘される、ふつう一度の食事に飯とパンの両方を食べるものはいない。飯をとるか、パンを選ぶか、どちらかである。日本人の食事としてはあたりまえのことであるが、ヨーロッパの食事だったら肉料理のつけあわせにバター…

『食事の文明論』の読書メモ3――私事としての食事と食卓革命

さらに引き続いて『食事の文明論』*1です。第7章の「食卓での分配法」で、著者は日本の食卓の変遷を辿ります。 平安時代末期の書物に、食事をする庶民の絵が描かれているとあります。その絵では、各人の前にお盆が置かれ、お盆の上にご飯のお椀と汁椀、それ…

『食事の文明論』の読書メモ2――国家の学としての栄養学

引き続き『食事の文明論』*1を読んで行きましょう。 著者は4章の「食事と宗教」において、食に対する宗教による禁欲思想を指摘したあとに、5章の「食事と医学・薬学」で、それが今日では医学や栄養学に取って代わられていると指摘しています。 宗教による禁…

『食事の文明論』の読書メモ1

食事の文明論 (中公新書 (640))作者: 石毛直道出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 1982/01メディア: 新書購入: 2人 クリック: 9回この商品を含むブログ (2件) を見る まだ読み途中なのですが、序章で著者が書いているように、学術的な記述というよりはエ…

『「食育」批判序説』を頑張って読んだのさ。

さて、本日は先日も取り上げた『「食育」批判序説』*1につきまして、内容に踏み込んで見ていきたいと思います。 書いているうちにとても長くなってしまったので、最初に構成を記しておきましょう。 「朝ごはん」運動への批判 ケトン体研究詳細 断食療法 それ…

『「食育」批判序説』批判

「食育」批判序説――「朝ごはん」運動の虚妄をこえて、科学的食・生活教育へ作者: 森本芳生出版社/メーカー: 明石書店発売日: 2009/08/01メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 3人 クリック: 27回この商品を含むブログを見る いやぁ、すごい本です。 以前か…

「ニワトリ狩り」の悪影響

豚を飼育して最後には食べる「いのちの授業」というのがあったけれども、実はそれには前身があったのかもしれません*1。「食べる」思想 ~人が食うもの・神が喰うもの作者: 村瀬学出版社/メーカー: 洋泉社発売日: 2010/03/06メディア: 単行本(ソフトカバー)…

梅毒ってもともと新大陸の病気だと思ってたけど

(1492年)十一月二十七日、火曜日、ジュネーヴで市民代表のジャン・メリアールが>の治療をするために休暇を願い出る。つまりこれは梅毒のことだ。 (『1492 西欧文明の世界支配 (ちくま学芸文庫)』p295) このときコロンブスはまだキューバにいます。随行して…

主食あれこれ

以前見た『肉食の思想』*1によれば、ヨーロッパの食事には主食・副食の区別がないとのことでした。牧畜適地で動物との距離が近かったこと、家畜を食らう習慣を持ちながら、それでも集団の協力が必要なパン食を捨てなかったことが、ヨーロッパ思想の土壌を作…

特に専門外の権威には気をつけよう

肉食の思想―ヨーロッパ精神の再発見 (中公文庫)作者: 鯖田豊之出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2007/08メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 22回この商品を含むブログ (16件) を見る 日本ではごく当たり前に「主食」なるものがあって、それはたとえばご…

リスクコミュニケーションが腑に落ちた

リスク理論入門―どれだけ安全なら充分なのか作者: 瀬尾佳美出版社/メーカー: 中央経済社発売日: 2005/04/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 65回この商品を含むブログ (4件) を見る いろいろと素晴らしい本だと思うのですが、わたくしにとってなにが一…

ヨーロッパの昔の食——ヨーロッパにも肉の食えない時分がありました

ヨーロッパの舌はどう変わったか―十九世紀食卓革命 (講談社選書メチエ)作者: 南直人出版社/メーカー: 講談社発売日: 1998/02メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 37回この商品を含むブログ (9件) を見る 今日の日本の食について欧米化していると言われます…

「コメ志向」再考——または、ニッポンだって肉を食う!

食文化から社会がわかる! (青弓社ライブラリー)作者: 原田信男,竹内由紀子,中村麻理,矢野敬一,江原絢子出版社/メーカー: 青弓社発売日: 2009/10/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 31回この商品を含むブログ (7件) を見る さて、先日は第4章「シンボル…

「シンボルとしてのスローフード」——または、食育とスローフード

食文化から社会がわかる! (青弓社ライブラリー)作者: 原田信男,竹内由紀子,中村麻理,矢野敬一,江原絢子出版社/メーカー: 青弓社発売日: 2009/10/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 31回この商品を含むブログ (7件) を見る パルテノン多摩で行われた講演…

デトックスが具体的になんなのかは知らないけれど

(妊娠中に)泥を食べるという一見奇妙な習慣でさえ、つじつまが合う。泥は有毒物質を吸収して血管に流れる量を減らすことが証明されているし、胃のむかつきや吐き気止め薬<カオペクテート>の主成分だ。 (『みんなの進化論』p93) とりあえず泥を食うとい…

肉がだめなら無農薬野菜を洗わずに食べればいいじゃない。

と、肉を食べたくてぐずっている自分の子供に対して、菜食主義者の親が言ったとか言わないとかですが、もし仮に言っていたとすれば、彼、もしくは彼女は、己のビタミンB12供給源についてよく知っていたに違いありません。 獣肉、魚肉、鳥肉、乳製品は、(中…

『日本型食生活の歴史』の、部分的にしか読んでないから部分的なまとめ

日本型食生活の歴史作者: 安達巌出版社/メーカー: 農山漁村文化協会発売日: 1982/03メディア: 単行本 クリック: 16回この商品を含むブログ (1件) を見る 突っ込みたいところはあるんだけど、でもなんかモヤモヤして突っ込めないままになっていたので、はっき…