野菜の摂取量を調べてみた

年々野菜の消費量が減っているとも聞く。
これは味の善し悪しに限らず、日本人の食生活、食べ物の
嗜好が以前と変わってきているのも大きな原因だと思う。

ある統計では去年度2007年に国民1人当たり1年で野菜を食べた量は
109kgと言い、10年前の1割減少しているという。

野菜の栄養が減少している 2-3 Ms.Gordonの日記

 この種のことは『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 (光文社新書)』で否定されなかったかと思ってあたってみると、

統計上もっとも野菜の摂取量が多いのは、大豆と同じ九六年、計二八五・五グラム。二〇〇四年は、二五三・八グラムです。
(『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 (光文社新書)』p160)

あら、確かに10%ほど減ってる*1。でも一番多かった年と比べて減った減ったというのはちょっと反則っぽいので、あきらめ悪くほかの年もあたってみた。(単位はグラム。資料は国民健康栄養調査*2

  1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
緑黄色野菜 94.0 98.9 91.6 87.9 94.2 95.9 93.6 88.9 94.2 84.0 94.4 95.6
その他野菜 184.4 186.8 183.5 172.7 182.3 180.1 185.9 180.8 183.4 169.8 185.3 192.2
合計 278.4 285.7 275.1 260.6 276.5 276.0 279.5 269.7 277.6 253.8 279.7 287.8

 これを見ると、野菜摂取量は減っていない。どころか2006年は、それまで最高だった96年の摂取量よりも多いくらいだ。メディア・バイアスで言及されている2004年だけが落ち込んでいて、ほかの年はほぼ横ばいを示している。

 じゃあなんで2004年だけ落ち込んでいるのかとgoogle先生に聞いてみたら、輸入野菜が急増している記事に対して、次のこうなことを書いているblogを見つけた。

レタス・キャベツ・ハクサイ…、どんどん輸入されているみたいだ。国産の不作で、緊急的に輸入してるのかもしれないが、ルートが確立されてしまうと、恐ろしいことになりそうだ。国産品が少ないからといって、安易に輸入に頼ることが、本当に許されるのか?

農業る!! 国産品認識週間 (2)

 この記事の日付は2004年11月10日だ。ひょっとしたら、2004年は、ただ単に野菜がとれなかったから食べられなかっただけなんじゃないか。

 よく言われることに、日本の食料自給率は40%だというのがある。でもあれはカロリーベースで、金額ベースだと確か70%くらいあったはずだ。カロリーベースでは自給率が低く、金額ベースではまあまあだということは、エネルギー源になるものは輸入頼みでそれ以外のものはそこそこ自給できていることになる。農林水産省/日本の食料自給率でちゃんと調べてみると、野菜の自給率は2006年で79%ある。

 要するに野菜についてはほとんど国内で作っているものを食べているから、その国内で野菜が取れなければ自然と食べる量減りますよ。ということなんじゃないか。2004年はたまたまその年で、たまたまメディア・バイアスを書いていたときに参照できる統計が2004年のものだったのでそれを参照して、それがどこかで食育とか食糧危機とかの文脈で使われて広まっただけなんじゃないだろうか。

 ちなみに、もっと長い目で見た野菜摂取量の変化は以下の通り。(単位はグラム。資料は国民栄養調査

  1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005
緑黄色野菜 48.2 51.0 73.9 77.2 94.0 95.9 94.4
その他の野菜 189.9 192.3 178.1 162.8 184.4 180.1 185.3
合計 238.1 243.3 252.0 240.0 278.4 276.0 279.7

 これ以前の資料は統計の取り方変わってたりで面倒なので載せませんごめんなさい。でも、95年までは増加傾向で、その後横ばいなのは見て取れる。これを見ても、昔の食生活はそれほどいいもんじゃないよと思うんだけどね。

*1:2007年とその10年前との比較じゃないけど。

*2:最新で2006年の概要までだから2007年はありません。