もう一度、フルクトース代謝のお勉強——糖新生のお勉強になるはずだったもの
タンパク質や脂質は、
低血糖を呈している人の経験談を、そのまま鵜呑みにしていいの?幾ら遠回りしてもブドウ糖そのものを提供してくれるわけではない。
低血糖症については知識不足でわからないけど、たんぱく質はグルコースになりますよ*1、そうだいい機会だから糖新生のお勉強でもしようかなと思って、ハーパーさまの糖新生部分と、以前書いた解糖系のお勉強を読み直していました。
すると、糖新生ではなく解糖系のホスホフルクトキナーゼの部分でわからなくなってしまいました。
グルコースの代わりにスクロース(ショ糖)を与えると、フルクトースは解糖の調節点ホスホフルクトキナーゼを通らずに脂質合成経路に流れるので、脂質合成が亢進する。
(『イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書27版』p220)
と、このようにハーパーさまは仰いますが、しかしフルクトースが解糖系に入るときに飛ばす調節段階は、ホスホフルクトキナーゼじゃなくてヘキソナーゼじゃないか、という気がしてきたのです。
ホスホフルクトキナーゼは、フルクトース6-リン酸→フルクトース1,6-ビスリン酸の反応に関与します。一方、ヘキソナーゼはグルコース→グルコース6-リン酸の反応に関与します。
フルクトースはリン酸化されてフルクトース 1-リン酸となり、解糖系に入る。
(同 p171)
んだから、このフルクトース1-リン酸の6位の炭素がリン酸化されれば、フルクトース1,6ビスリン酸になるじゃないか、ならホスホフルクトキナーゼの段階はバイパスされていないじゃないかと思ったわけです。
ので、糖新生ではなくもう一度フルクトースの代謝のお勉強です。
フルクトースは、一方ではグルコースをリン酸化するのと同じ酵素であるヘキソナーゼによって、フルクトース6-リン酸になって、解糖系に入ります。フルクトース6-リン酸だから、当然そのあと解糖されるとすれば、ホスホフルクトキナーゼに触媒されてフルクトース1,6-ビスリン酸になります。でもこの経路だと、ヘキソナーゼは通っているしホスホフルクトキナーゼは通っているし、解糖系をまったくバイパスしていません。
フルクトース代謝の別の経路では、フルクトキナーゼによってフルクトース1-リン酸になります。フルクトース1-リン酸は、肝臓に多く存在するアルドラーゼBという酵素によって、D-グルセルアルデヒドとジヒドロキシアセトンリン酸に分解されます。このうちのD-グルセルアルデヒドが、トリオキナーゼという酵素によってグリセルアルデヒド3-リン酸になります*2。
グリセルアルデヒド3-リン酸。どっかで聞いたことある名前だと思ったら、ペントースリン酸回路のお勉強にでてきました。グルコース6-リン酸からリブロース5-リン酸になってペントースリン酸回路に入ってくると、最終的にフルクトース6-リン酸とグリセルアルデヒド3-リン酸になって解糖系に戻ってくるのでした。つまり、グリセルアルデヒド3-リン酸は解糖系の中間体で、その位置はフルクトース1,6-ビスリン酸の次です。この経路だと、ヘキソナーゼもホスホフルクトキナーゼも通ってません。
さらに、
肝外組織では、ヘキソナーゼはフルクトースを含むほとんどのヘキソース糖のリン酸化を触媒する。しかし、グルコースはフルクトースよりもよい基質なので、グルコースはフルクトースのリン酸化を阻害する。
(同 p201)
というので、フルクトースは2つある経路のうち、ほとんどは後者の、フルクトキナーゼによってフルクトース1-リン酸になって、そのあとどうのこうのでグリセルアルデヒド3-リン酸となり、解糖系に入るものと思われます。
したがって、「フルクトースは解糖の調節点ホスホフルクトキナーゼを通らずに」解糖系に入り込んでくると、こういうわけのようでした。