生化学

生化学の教科書で見たケトン体

すでに何回も書いている話題ですが、飽きもせず引き続きケトン体でございます。 こちらの記事の追記で記したように、リッピンコット生化学*1では、ケトン体は長期に渡る飢餓時において、脳のエネルギーの70%ほどをまかなうようになる、と書かれています。残…

ケトン体がわからなくなった

先日取り上げた『「食育」批判序説』*1のなかで、著者はガイトン『人体生理学』*2から引用して、体内で糖が不足した際には 脳で使われるエネルギーの約2/3はこれらケトン体、主としてβ−ハイドロキシプチレートに由来する。[ガイトン 1982:844] (『「食育…

本日のお勉強――肝臓での乳酸代謝

糖質の代謝に関する記述である。正しいのはどれか。 (略) (問題文)(3) 乳酸は、脂肪組織でグルコースに変換される。 (略) (解説)×(3)肝臓においてグリコーゲンに変換される。 (クエスチョン・バンク管理栄養士国家試験問題解説 2011]) グリコーゲ…

ピルビン酸の行き先についてのお勉強

砂糖摂取のカルシウム排泄増加説がコメントであったので、google先生に聞いて2, 3適当に見繕ってみれば、「砂糖摂取で増加したグルコースをTCAサイクルで処理できず、ピルビン酸から乳酸に代謝されてpHダウン、酸・塩基平衡のためにカルシウムが消費される」…

トリプトファンとセロトニン2

以前、トリプトファンとセロトニンの話のときに、 逆に高炭水化物食(無たんぱく)だと、たんぱく質はないけれども、上昇した血糖からインスリンが分泌されて、それがトリプトファン以外のLNAAsの筋肉への取り込みを刺激するので*5、血漿トリプトファン/LNAA…

トリプトファンとセロトニンを調べてみた

古い本ですが図書館で偶然『栄養と行動*1』なるものを見つけましたので、トリプトファンに関係する箇所でも見てみましょう。なぜトリプトファンなのかといえば、 セロトニンは、私たちの気分を向上させ、幸福感をもたらす伝達物質である。(略)セロトニンは…

酵素等に対する防御機能について

以前、酵素栄養学について触れたことがあります。そのときは「詳しくはほかのページで」というなんともお手軽な触れ方で、そして今回も詳しくは見ないのですが、食物から酵素を摂ることによって人の体で作られる酵素を節約して健康に過ごそう! というのがき…

菜食とビタミンB12についてのお勉強

以前「肉がだめなら無農薬野菜を洗わずに食べればいいじゃない」などと言ったわけですが、そちらのコメント欄で「マクロビ論文5 海藻とビタミンB12」を紹介されたので、そちらを参考にしながら菜食とビタミンB12について調べてみました。 まず「海藻とビタミ…

ちょっとどうでもよくなっているコリ回路

問題を間違えた試験からも日にちが経ち、ヌクレオチド代謝をまとめてエネルギーを発散した結果、ちょっとどうでもよくなっているコリ回路についてです。 筋肉などで生じた乳酸を肝臓でピルビン酸を経てグルコースにまで代謝して、再び血中に放出されてどこぞ…

間違ってへこんだ、NADPHとコリ回路

とある試験問題の選択肢で、「ペントースリン酸回路は核酸合成に必要なエネルギーを供給する」「肝臓は筋肉から輸送された乳酸をグルコースに代謝する」というものがありました。ペントースリン酸回路はすでに見たように、その機能は2つありました。ひとつ…

糖新生のお勉強

解糖系のお勉強の繰り返しになるけど、解糖とはグルコース(炭素数6)がピルビン酸(炭素数3)に代謝されるまでの反応です。 ピルビン酸はそのあとピルビン酸デヒドロゲナーゼという酵素でアセチルCoA(炭素数2)になり、アセチルCoAはオキサロ酢酸(炭素数4…

もう一度、フルクトース代謝のお勉強——糖新生のお勉強になるはずだったもの

タンパク質や脂質は、幾ら遠回りしてもブドウ糖そのものを提供してくれるわけではない。 低血糖を呈している人の経験談を、そのまま鵜呑みにしていいの? 低血糖症については知識不足でわからないけど、たんぱく質はグルコースになりますよ*1、そうだいい機…

そういえば、鎌形赤血球で出てきたペントースリン酸回路

そういえば以前読んだ本に『辛いもの好きにはわけがある 美食の進化論』というのがあって、そのなかでどうもペントースリン酸回路に関係するような記述があった気がしたので、再び図書館で借りてみました。 確かに記述はありまして、それは第三章の「ソラマ…

ペントースリン酸回路のお勉強

先日は 赤血球はミトコンドリアを欠いており、それ故、つねに(嫌気性の)解糖とペントースリン酸回路に完全に依存している。 (『イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書27版』p154) なんてことを引用しながら、やはり毎度のようにその文章をちゃんと理…

脳はどこまでケトン体で生きられるか

たとえば、朝食に炭水化物を摂りましょうなんていう言説があるわけです。脳はブドウ糖しかエネルギーにできない、朝食に炭水化物を摂取して脳に糖分を与えて脳を目覚めさせましょう。といった具合です。でもこれは真実とはかけ離れていて、栄養学の講義を2,3…

ケトン体の「飢餓」

ケトン体の説明として、よく「飢餓状態でエネルギー源として活用される」というのがあるけれども、具体的にいつ頃からケトン体がエネルギー源として利用されるのかこの「飢餓時」という説明からは見えてこなかった。普通に一食抜いたくらいで利用されるのか…

脱共役たんぱく質のお勉強――にんにくを食べると発熱が増える

にんにくを食べると褐色脂肪細胞のミトコンドリア内に脱共役たんぱく質が増えるというのを書いたけど、実のところ脱共役ってなんなのさと思っていた。ハーパーさま(『イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書27版』)に聞いてみると、話はミトコンドリア…

朝バナナの疑問

よく果物をたくさん食べるというと、果糖で太ることを気にする方がいますが、果糖は代謝があがり、脂肪燃焼の促進に効果的です。 朝バナナダイエットのやり方 「果糖制限食は減量を促進するかもしれない」や「解糖系のお勉強」で見たように、フルクトース(…

高血糖からの動脈硬化

昨日メタボリックシンドロームに関する講演を聞いて、イメージできなかった高血糖から動脈硬化になるメカニズムをお勉強。放送大学教材食の科学の立ち読み記憶とネットで調べたことをあわせると、どうもこれはアミノカルボニル反応(メイラード反応)が影響…

果糖はインシュリンによる制御を受けることなく

っていうのがどういう意味を持つのかはわからない。

グリコーゲンローディングの話

ただ単に体内に貯えられるグリコーゲン量が増えるのかと思ったら、違うんだ。 通常グリコーゲンはグルコースのα1→4結合の直鎖が、α1→6結合で枝分かれをしながらつながってる構造になっている。この枝分かれのおかげで、多くの場所で分解が起こって短い時間に…

過剰なエネルギーはグリコーゲンと脂肪、どっちに貯えるとどう決まってるの?

という疑問があるのだけど、解糖系のお勉強で出てきた解糖系の律速段階のひとつに、グルコースをα-D-グルコース 6-リン酸に変えるヘキソナーゼがある。これによって細胞はエネルギー産生に必要なだけのグルコース 6-リン酸を手に入れてるけど、肝細胞にはこ…

解糖系のお勉強

グルコースの代わりにスクロース(ショ糖)を与えると、フルクトースは解糖の調節点ホスホフルクトキナーゼを通らずに脂質合成経路に流れるので、脂質合成が亢進する。 (『イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書27版』p220) なんてことを引用しながら…

マロニルCoAが毒性あるなら

果糖はインシュリンによる制御を受けることなく、腸から肝臓へ運ばれて代謝される。果糖はまず、アセチル・コエンザイムAになり、それからクレブス回路に入る。 アセチル・コエンザイムAが肝臓のクレブス回路で処理し切れない場合、以下のことが起こる。 二…

高脂肪食を食べるとエネルギー代謝が亢進されるというけれど――特異動的作用

褐色脂肪細胞は体内の余分なエネルギーを燃焼し、熱として放出させる組織なので、高脂肪食を食べると2倍くらいに大きくふくらみます。 (略) つまり脂っこいものを食べると、体は自動的にエネルギー代謝を促進させますが、にんにくを一緒に食べるとさらに代…

ケトン体補足

肝で作られたアセチルCoAは2個結合して、 (略) の2つの反応を経てアセト酢酸を生じる。これが肝以外の細胞に運ばれて、TCAサイクルのところで出てきたサクシニルCoAと反応して、アセトアセチルCoAに戻り、さらに分解されて2・アセチルCoAになる。 (『生化…

ピチャンジャラ族はやっぱり糖なしでもいいかもしれない

っていうのはなにもピチャンジャラ族が人類とは異なる代謝系を持つ地球外生命体だからではなく、 ここで、アセトン体が増加する場合を挙げておく。 1) 脂肪の摂取に対して糖質(蛋白質も含む:蛋白質は糖になりえる)の摂取が少ないとき「糖からオキサロ酢酸…

で、どうしたらオキサロ酢酸は少なくなるの?

飢餓時にアセチルCoAがあってもTCAに入れないというのは、アセチルCoAとオキサロ酢酸でクエン酸になる反応ができない→オキサロ酢酸不足ってことでしょ。 しかし、いくらエネルギー源になるアセチルCo-Aが供給されても、OAAがないためにTCA回路の活性が弱く、…

ウサギ飢餓の謎

それは、あらゆる食物がほとんど底をつく「飢餓期」の最盛期になると、狩猟採集民は、しばしば、しとめた獲物の肉の特定部分を、ときには全部を、食べないで捨ててしまうという行動である。たとえばオーストラリアのピチャンジャラ族は、しとめたカンガルー…

アトキンスダイエットは

こっちのほうも影響してると思うんだけどね。 もし私達が、身体が対処しうる以上にたんぱく質を摂取すると、身体はそれを分解し、ケトン体、尿酸、アンモアニなどの有毒副産物を大量に産生するとともに、ミネラル損失も起こる。有毒副産物は食欲を低下させる…