カロリー制限したときの活動性が気になる

 カロリー制限を行うと寿命が延びる可能性がある、というのは、以前行ったアンチエイジング講座でも話されていたことです。酵母、線虫、ショウジョウバエ、サルに至るまでそういった傾向が見られるので、おそらく人間でも同様の効果があるのではないか、というのです。

 その時も、またそれ以前の初めてカロリー制限による寿命延長効果を聞かされたときも思ったのですが、カロリーを制限することで活動量は減ったりしないのでしょうか。

 アンチエイジング講座で紹介されていたカロリー制限を行ったウィスコンシン大学のサルは、自由摂食のサルに比べて体重こそ60%しかないものの、毛づやはよく、動きも活発であったと言います。しかしながら、このサルはかなりの高齢なので、比較対象の自由摂食サルも老化によって衰え活動量が減少したので、相対的に活発であるだけかもしれません。若かりし頃の両者を比較して、あるいは、カロリー制限の実験を行って以降年老いて死ぬまでの両者の総活動量を比較して、それでもカロリー制限サルのほうが活発であると言えるのでしょうか。

 言えないのではないか。と、オレゴン保健科学大学の研究なら答えてくれるかもしれません。

オレゴン保健科学大学の新しい研究によれば、単に食事摂取量を減らしただけでは、顕著な体重減少は起こせないということです。これは身体に備わる補償機能が、カロリー摂取の減少に反応して身体活動量も減少させてしまうからだといいます。

海外最新健康・栄養ニュース 2010.4.14「たぶんダイエットだけでは顕著な体重減少はおこりません」

 18匹のアカゲザルを使って、一日の摂取カロリーを30%減少させて観察したところ、体重は減らずに活動量が減ったそうです。摂取カロリーを30%減少させたって、ウィスコンシン大学のカロリー制限サルは、自由摂食の60〜70%のカロリーを与えられていますから、制限されている割合はほぼ同じです。それで、

「驚いたことに、1月たっても体重は顕著には減少しなかったです」と研究者のひとりは言いました。「代わりに、身体活動量の顕著な減少が観察されました。翌月さらにカロリーを減らすと身体活動はさらに減ったのです」

と言いますから、これはウィスコンシン大学のカロリー制限サルだって、老いた今でこそ比較的活発であるものの、若かりし時分はひどく内にこもった少年だった可能性が高いです。

 ちなみに海外最新健康・栄養ニュースのこの記事、

サルは別にダイエットしているわけじゃないので、エサが減ったら動かなくなるの当たり前じゃないですかというツッコミは禁止です。

と書いているくらいですので、もちろん至極当たり前の結果なんでしょうが、しかし4月16日づけの記事では「カロリー制限はより健康な長寿をもたらしそうです」の題でまたカロリー制限の記事を紹介していて、寿命のみならず健康寿命が延びるとしています。

 いや、別に違う研究者の違う研究、さらには違う雑誌出典の翻訳記事だからいいんだけどさ。活動性はどうなのよ。

追記

 そういえば、第二次大戦中にミネソタ大学で行われた実験によれば、中等度の栄養不良で知的関心が狭まって、関心の対象がほぼ食事に関することになるんだっけ。

 あまり活動的でなく、頭に浮かぶのは食事のことばかりっていうのは、あまり楽しい日々じゃなさそうだなあ。