アンチエイジング講座――@かずさDNA研究所

 10/11に聞きに行った一般向けの公開講座をまとめてみた。商売っ気がありすぎて、白澤卓二の宣伝を聞きに行った気分。

寿命に影響する因子

  • 一卵性双生児と二卵性双生児の研究から、寿命決定における遺伝要因は25%である。75%は遺伝的要因ではない。
  • 食事・運動・生きがいが寿命に影響を及ぼしている。

まず食事

  • カロリー制限を行うとどの動物でも寿命が延びている。→人間でも伸びるのではないか。
  • ラットでカロリー制限を行うと最長1.4倍、平均で1.2〜1.3倍伸びている。→人もカロリー制限によって2〜3割の寿命延伸ができるのではないか。
  • 今だいたい80年生きてるんだから、2〜3割伸びれば100歳まで生きられることになる。
ウィスコンシン大学のサルを対象にしたカロリー制限実験
  • 成長期が終わるまでは普通のえさ、そのあと栄養素はしっかり確保してカロリー制限するサルと、カロリー制限せずに通常のえさで飼育するサルに分ける実験を行った。
  • 17年後、カロリー制限を行ったサルは普通のサルに比べて体重が60%しかない。(成長期が終わったあとの体重から増えてないから)
  • 髪の毛につやがあり、皮膚も若々しい。動きの頻度も異なる。
  • カロリー制限のサルには食べ放題の6〜7割のカロリーを与えているから、人も腹6分目から腹7分目くらいにすれば、カロリー制限の効果が現れるのではないか。
カロリー制限は長寿遺伝子をonにする
  • 酵母菌に与えるグルコースを通常の20%に抑えると、ミトコンドリアからNADが出てSir2遺伝子の周りに集まる。
  • Sir2の発現を促しているのではないか。
  • 長寿遺伝子は全員が持っている。ただそれを発現させられているかいないかの違い。
  • レオナルド・ガレンテ談「メタボの人はSir2をonにできていない」
抗酸化食品を摂取しよう
  • 遺伝子に働きかける食材がある。
  • 赤ワインに入っているポリフェノールの一種であるレスベラルロールは、Sir2をonにする。
  • レスベラルロールはブドウの皮のすぐ下にある。赤ワインは皮をつけたまま作るけど白ワインは皮を取り除いて作るので、白ワインにはこれは含まれていない。
  • ほかにも抗酸化作用のあるフィトケミカル(主に植物の色素成分とか)を摂取すると、体の酸化を予防して老化のプロセスを抑えられる。
  • フィトケミカルは植物が環境からのストレスに対応するために作り出している、防御システムの一種である。
  • 紫外線に対応するために抗酸化物質を作り出している。
  • だからその植物の育った環境を知れば、より抗酸化物質が含まれている食品を知ることができる。
  • で、こんなものを作りました。
  • 日系米国人を対象にした研究によれば、週三回以上野菜または果物ジュースを飲むは人、週一回未満の人に比べてアルツハイマー発症のリスクが76%低減していた。
  • 野菜も果物も種類は特定できなくて、ただ「野菜または果物ジュースを飲む人」としか特定できなかった。
  • だからこれはいいんですよ。
血中インスリン濃度を抑えよう

運動

  • 運動することで、メタボリック症候群の予防、骨粗しょう症の予防、うつ病の予防と、心身の健康に寄与することができる。
  • 通常の脂肪細胞は丸くてアディポネクチンを分泌しているけど、これが肥満している脂肪細胞になると炎症性のサイトカインを分泌するようになり、アディポネクチンを分泌できなくなる。
  • 血中アディポネクチン濃度が高いと、動脈硬化の最後のイベントが起こりにくい。
  • だから肥満を防ぐことは重要だ。

生きがい

  • 「豊かな環境」で暮らすマウスは、「貧しい環境」で暮らすマウスに比べて、海馬に新しい細胞が五倍生まれていた。
  • 使わないと「こころ」が老化します。

疑問とか、感想とか

カロリーを制限して活動性は保てるの?

 ビデオで紹介されていたカロリー制限サルは確かにそうじゃないサルに比べて活動的であったけど、あれはそうじゃないサルのほうが老化を重ねたあとの映像だ。単純に考えて、活動するにはエネルギーがいる。たとえば、体重60kgの人がバスケットの試合で40分フル出場するには、

  8.0METs × 40/60min × 60 × 1.05 = 336kcal

で、336kcal必要なわけだ。その間読書でもしていれば

  1.0METs × 40/60min × 60 × 1.05 = 42kcal

42kcalで済む*1。つまり、読書じゃなくてバスケを選ぶと、40分間で300kcalほど必要とされるカロリーが増えてしまうわけだ。カロリー制限をしていた場合、こういった活動のエネルギー量というのはまかなえるんだろうか。読書は読書で楽しいけど、カロリー制限がそういった身体活動を抑える方向に向かうとすれば、それはどうなんだろう。不活動で長生きなのと、活動的でそこそこ長生きなのどっちを選ぶ? って選択になってしまわないんだろうか。
 それに、不活動だと基礎代謝が低下して、高齢者になったとき食欲がなくて低栄養に陥りそうだけど、ウィスコンシン大学のサルは食欲どうなんだろう。

ジュース限定の効果なの?

 途中で紹介されていた日系米国人を対象にした調査は、「野菜や果物ジュース」で「ジュース」限定なんだろうか。野菜や果物を食べ物として摂取していたって、というかむしろ食べ物として摂取していたほうがよさそうなものだけど、どうして「ジュース」なんだろう。もとの研究が「日本茶の効果を見たかった研究だった」と言っていたから、ひょっとしたら飲み物限定の研究だったんじゃないか。

確保する栄養素はどのくらい?

「栄養素は確保して」っていうのはちょっとわかりにくい。カロリーを多く摂取すればその分必要な栄養素は増えていくし、その逆もまたしかりだ。だからカロリー制限をしたら確保すべき栄養素は減るはずなんだけど、その「減った栄養素」を確保しているということでいいんだよね、きっと。