健康
先日、群馬大学の高橋久仁子先生の講演を聞く機会がありました。実のところ高橋先生の話を聞くのはこれが2回目で、1回目である、今から1年ほど前の放送大学面接授業については、講義の1週間後くらいに内容をノートにまとめていたのでした。 ところが、いつか…
栄養士を養成する学校でも、また管理栄養士の参考書でも、栄養学史に軽く触れることがあるのですが、そこでは3人の日本人が登場します。栄養研究所を作った佐伯矩、食事によって脚気を予防した高木兼寛、脚気を予防する成分オリザニン(=ビタミンB1)を発見…
引き続き『食事の文明論』*1を読んで行きましょう。 著者は4章の「食事と宗教」において、食に対する宗教による禁欲思想を指摘したあとに、5章の「食事と医学・薬学」で、それが今日では医学や栄養学に取って代わられていると指摘しています。 宗教による禁…
先日久しぶりにあったカミムラさん(仮名)は、最近整体に通い始めたとか。といってもまだ何度も行ってはいないそうなのですが、わたくしと会うその日には、お値段の高いなんとかという整体屋さんに初めて行ってきたそうです。さすがにお値段が高いだけあっ…
わたくしは一応栄養学を学ぶものですので、世にあふれる健康・栄養情報については、快刀乱麻即座にバシッと判断できなければなりません。したがいまして、昨今の人気記事「「ためしてガッテン」がダイエット食品会社を潰しにかかってる件」につきましても、…
栄養学とも食物とも関係なくて、特に詳しいわけでもないインフルエンザについての話です。 ことの発端はインフルエンザウイルスが感染・増殖するのに、ウイルス表面にある2つのたんぱく質、ヘマグルチニンとノイラミニダーゼが重要な役割を果たすと聞いたと…
昼寝はいい、という話を聞きます。永きにわたる幼き日のそのいずれかの記憶によれば、「20分の昼寝は夜の睡眠1時間に勝る」と母親かだか父親だかが言っていましたし、最近では昼寝をすると記憶力が上がるなんて話もあります。午後の眠気に襲われずに作業効率…
コメント欄で教えていただいた『食事が血糖値に及ぼす影響—米飯食とパン食の差—』*1が、米飯食とパン食の差以外の部分が面白かったのでご紹介致します。 この実験は、一般的に血糖のコントロールには小麦粉よりも米飯がいいと言われているけれども、実際のと…
主要な保健機関は、環境中の微量の化学物質が大きな危険因子でないことに同意している。きわめて重要なのは生活様式である。喫煙、飲酒、食事、肥満、運動。これらはきわめて大きな影響を及ぼす。ほとんどの推定で、すべての癌のおよそ六十五パーセントの原…
基礎代謝の幅ってどの程度なの? 朝食食べた食べないで(?)簡単に変わってしまうかもしれない基礎代謝ですが、では一体全体、どの程度の幅があるものなんでしょうか。 厚生労働省策定 日本人の食事摂取基準〈2005年版〉で参考文献に挙げられている、日本人…
朝食を食べないと太るという言説があります。それはたとえばこんな具合です。*1 朝食を欠食する児の身長は,3歳時から小学4年時にかけて低値を呈した.体重は,3歳時および小学1年時では低値を呈したが,その後逆転し,小学4年時および中学1年時では朝食を欠…
世の中のおそらく狭い範囲で幅を利かせている思想に一物全体というのがあって、それによれば食材は丸ごとすべて食べるのが健康によろしいとか。食材と食材じゃないものを先に分類しておいて、食材に分類したものはすべて食えというのも随分乱暴な物言いだと…
ささやかながら農薬についての知識を獲得しようと『食品安全性セミナー〈3〉残留農薬』を読んでいたら、面白いグラフがありました。がんの原因と思われるものについて、主婦とがんの疫学者にそれぞれ挙げてもらってその割合を示したものです。これを見ると、…
「食物繊維の健康効果は、ちょっと、むずかしい」で紹介されている記事によれば、小麦ふすまに便秘改善の効果はないとか。 ブラン(小麦ふすま)に含まれる水に溶けにくい不溶性食物繊維は便秘の解消の役に立たず、それどころか一層悪化させるおそれさえある…
映画「未来の食卓」を見ました。 映画は冒頭、ユネスコの会議の場面から始まります。そこでは、どうやら化学物質によってヒトの健康が害されていて、今の若者は近代始まって以降、初めて親世代よりも寿命が短くなるかもしれないと語られます。そのあとフラン…
テレビや新聞といった文化的な産物とは縁のない生活をしておりますから、世の中に酸素水という代物があることを知ったのはつい先日、お盆に帰った実家で久しぶりに読んだ新聞の紙面広告からなのでした。その前日には、今炭酸水が大人気というテレビ番組を見…
ものすごく勝手なイメージかもしれませんが、低GI=食後の糖の消化吸収が穏やか、というイメージを持っていました*1。これがどこから来たものなのかと言えば、おそらくはトクホの「血糖値が気になるかた」向け食品の関与成分が、二糖類分解酵素とかショ糖分…
「ビタミンは運動の努力を取り消してしまう」可能性があるとか。 「マルチビタミンの使用は女性のがん、心疾患、死亡リスクと関連しない」では、「マルチビタミンは利益も有害性もなさそうだ」というけれど、「'No evidence' for vitamin benefit」では、無…
健康的な範囲の体重を維持することは、食事中のたとえば抗酸化物の種類・量を気にすることや脂肪と炭水化物の比率に神経質になるよりも、長期の健康のためにはもっと重要なことである。 (「体重が健康に及ぼす影響」臨床栄養別冊 メタボリックシンドローム…
世の中にはBMIという指標があって、これは体重kgを身長mの二乗で割った値のことです。この値が22.0であれば理想的、18.5〜25.0であれば普通、18.5未満はやせ、25.0以上は肥満であるとされています。なぜ22.0が理想なのか、なぜ18.5〜25.0の範囲に体重をおさ…
「空腹時間が長いと、食後血糖値が高くなる」で見た「朝食欠食が昼食後の血糖値変動に及ぼす影響」で、もうひとつ面白いなあと思ったのが、血糖値の分散です。 たとえば、食後60分後の血糖値を比べると、「朝食」「朝食摂食・昼食」「朝食欠食・昼食」でそれ…
というのが、「朝食欠食が昼食後の血糖値変動に及ぼす影響」の結論だと思われるのです。これによれば、 被験者6名 同じ内容の実験食を 朝食として摂取(「朝食」) 通常の朝食を摂ったあと、昼食として摂取(「朝食摂食・昼食」) 朝食欠食のあと、昼食とし…
ヨーグルトは牛乳を乳酸菌により乳酸発酵させてゲル状にしたもので、牛乳の主要糖である乳糖は分解されて乳酸になっている。(略)たんぱく質やカルシウムは、牛乳より吸収されやすくなっている。 (『健康・栄養食品アドバイザリースタッフ・テキストブック…
先日はミネラルの不足を見ましたが、今回はビタミンの不足を見てみましょう。 ビタミンA まずはビタミンAです。上は男性、下は女性の表で、単位はμgREです。 年齢 平均値 中央値 推定平均必要量 推奨量 18-29歳 602 412 550 750 30-49歳 570 393 550 750 50-…
福岡伸一は 飽食の時代に生きる現代人は、常時カロリーオーバーの危険性にさらされることはあっても栄養素が欠乏することはほとんどありえない。 (略) これは毎年、厚生労働省が行う栄養調査でも明らかになっていることで、少なくとも普通の食生活をしてい…
ここ一週間ほど大豆にこっていて、朝食、夕食と日に二回は食しています。なんか大豆って健康に良さそうじゃん、っていう栄養学を学ぶものにあるまじき民間信仰からなんですけど、しかし大豆といえば大豆イソフラボンです。きな粉ブームの際にはちょっとばか…
基礎栄養学p187「日常生活の活動強度の区分」から、多くの人に当てはまりそうな活動を抜粋してみました。 日常生活活動の種類 動作強度(Af) 睡眠、横になる、ゆったり座る 1.0 談話 1.3 料理、食事 1.4 身の回り(身支度、洗顔、便所) 1.5 車の運転 1.5 …
身体活動レベルの話をしたのですから、その算出方法についてのお話をするのが筋というものでしょう。いえ仮に筋ではなかったとしても、今の身体活動レベルを把握しておくのはわたくし自身にとっても悪くないのではないかと思うので、ひとつ昨日の生活をもと…
日本人は栄養不良?では、推定エネルギー必要量とエネルギー摂取量とを比較して、70歳以下の各年代で後者が前者を下回っている現状にあるのをみて、「日本人は栄養不良である。のかもしれない」としましたが、ちょっと思い直しました。少なくともエネルギー…
『ここがおかしい 日本人の栄養の常識 -データでわかる本当に正しい栄養の科学- (知りたい!サイエンス)』という本では、平成15年の国民健康・栄養調査からエネルギー摂取量等の年次推移にもとづいて、日本人の摂取エネルギー量は年々減少していて、日本人は…