遺伝子組み換え植物――@かずさDNA研究所

 同じく10/11に行われた一般向けの公開講座をまとめてみた。ざっと聞けてよかったけど、やっぱりまだわからないことが多くて、これは勉強しないとだめだね。

遺伝子組み換えは自然界でも起こっている

  • 多くの生物はほかの生物の遺伝子を取り込んで進化してきた。
  • ミトコンドリアとか、葉緑体とか。
  • だから遺伝子組み換えといっても、だいそれたことじゃない。

遺伝子組み換えでできること

  • 薬品もできる。
  • もともとインスリンを作らないバクテリアにヒトインスリンを作らせることもできる。
  • 安価で、製品の性質が均一で、ウィルスなどに感染していない医薬品が容易にできることになる。
  • 農作物に応用して、さまざまな効果をもたらすことができる。

農作物への応用

  • 害虫がつかないものに
  • 除草剤の散布量が少なくて済むものに
  • ビタミンを含むものに
  • 従来耕作の不可能な土地でも耕作可能なものに
  • 収穫量の多いものに
  • その他
除草剤耐性
  • グリホサートは、芳香族アミノ酸を作る代謝系をブロックし、除草剤として機能する。
  • このグリホサートの作用を受けないEPSPSを組み込んだ植物、あるいはグリホサートを分解できる酵素遺伝子を組み込んだ遺伝子は、グリホサート耐性植物になる。
  • 一度にほかの草を除けるので、結果的に農薬の散布量は少なくできる。
  • 収量UP、作業量DOWN。
耕さなくてもよくなる
  • 従来の農法では、雑草の根を除くために農地を耕す必要があった。
  • これによって土が軟らかくなり、雨によって表土が流出してしまう問題があった。
  • 除草剤耐性植物の利用で、耕さなくても除草剤で雑草を除草できるので、この問題がなくなる。
ビタミンを含むものに
  • βカロテンを多く含むゴールデンライスというものが作られた。
  • 途上国ではビタミンA不足で視力が悪化したり失明したりする子どもたちが大勢いる。
  • その子たちを救えるのではないか。

遺伝子組み換え植物の安全性

食べたDNAは分解消化されるので、DNAによる危険性はない。
  • そもそもほかの食品のDNAだってヒトの中で発現してない。分解されている。
DNA由来のたんぱく質も分解消化される。
  • こちらのほうがDNA自身による危険性を危惧するよりも科学的に意義のある疑惑だけど*1動物実験で安全性が確認されてからGOされる。
  • たとえば、蚊を殺すたんぱく質を作る遺伝子組み換え食品はあるけど、このたんぱく質の受容体はヒトにはないから影響されない。安全である。
環境への影響はまだわからないところが多い。
  • 生態系への侵入
  • 近縁野生種への交雑
  • 有害物質の産生

感想とか、疑問とか

恐怖をあおってないか?

 遺伝子組み換えに反対すると思われる人からの「第二の沈黙の春だ」「実際に起こっている環境に対する悪影響をどう考えているか」という質問(?)に、「農薬の使用量は遺伝子組み換え技術によって減少する」「遺伝子組み換えでない農作物のほうが農薬の被爆量が多い」と答えたあとに、「遺伝子組み換えがなければ世界が飢える」と仰られていた。たぶんこの発言は使命感であろうし、本当にそう思って取り組まれているんだろうとは思う。でも、なんかヒステリックな物言いに聞こえる。質問者側も、一般人だからしょうがないんだろうけどデータ示してないからヒステリックに聞こえるし、双方恐怖をあおっているように思った。

案外淡白な質問者

「遺伝子組み換えがなければ世界が飢える」「それをなんとかしなければいけないんじゃないか」って回答のあとの質問者が、「哲学の違いでしょうね」で終わっちゃってた。哲学が違うことを確かめたくて質問したんだろうか。なんかずいぶん淡白じゃないかそれは。

*1:っていうのは、たぶんアミノ酸まで完全に分解されずにペプチドのまま吸収されるものもあるからだろう