食品エネルギーの計測法

 いきものがかりのダイエット担当の人が「カロリーは特別な箱の中で燃やして計る」と言っていたのを聞いて、そう言えばエネルギーの計測法が全然記憶にないことに気がつきました。やれたんぱく質ケルダールだ、やれ脂質はソックスレーだと仕込まれて実験した覚えがある*1んですけど、エネルギーの計測法についてはそもそも習ったかすら記憶にありません。

 というわけで、調べてみました。

 食品のエネルギー値は、可食部100g当たりのたんぱく質、脂質及び炭水化物の量(g)に各成分ごとに定められた換算係数を乗じて算出する。
(『五訂増補日本食品標準成分表分析マニュアル―食品成分表の専門家がわかりやすく解説する』p56)

 あー、そりゃ実験しないわけだ。少なくとも五訂増補の日本食品標準成分表では、実際に燃やして食品のエネルギーを計ることはなく、炭水化物とたんぱく質、脂質から計算で求められているみたいです。

 と、これだけではなんなので、実際に燃やして計る方法について見てみましょう。

 いきものがかりの人が言っていたのは、おそらくボンブカロリーメーター爆発熱量計)のことだと思いますが、これで燃やして得た値(物理的燃焼値)と実際に体内でエネルギーになる量(生理的燃焼値)とは微妙に違うようです。

摂取した栄養素は全部吸収されるものではないので、消化吸収率を考慮に入れなければならない。
(『基礎栄養学』 p59)

 食べ物を食べると消化吸収をして、吸収されたものが体内で利用されるわけですが、食べたものすべてが吸収されるわけではありません。たとえば炭水化物は、消化吸収される糖質と消化吸収されない、かどうかはわからないけど少なくとも消化吸収されずらい繊維に分けられます。したがって、炭水化物の物理的燃焼値をそのまま当てはめると、単純に考えても繊維分多くなってしまいます。そこで、消化吸収率を計測して、吸収されるものに燃焼値を乗じようというわけです。

 逆に言えば、この消化吸収率の実験に際しては繊維も含めてなされているので、換算係数を乗じる際には繊維も含めた炭水化物の総量に乗じるそうです。

 また、たんぱく質は吸収された分すべてが体内でエネルギーになるわけではありません。

 糖質と脂質は、普通体内で完全に酸化されて二酸化炭素と水になる。しかし、タンパク質の場合には、クレアチニンクレアチン尿素などボンブカロリーメーター内なら燃焼可能な分解産物が、体内では未分解のまま尿中に排泄される。
(同 p57-58)

 したがって、物理的燃焼値ではそれぞれ1gあたり

になりますけど、ここからたんぱく質の未燃焼分を引いて、それから消化吸収率を考えなくてはなりません。

 たんぱく質1gについて、尿中に排泄される未燃焼分解物のエネルギーが1.3kcalらしいので、それを差し引いた4.35kcalがたんぱく質1gあたりの体内で燃焼されるエネルギーになります。さらに消化吸収率が、一般に混合食について、

なので、それぞれ1g摂取したとき実際に体内で発するエネルギーは、だいたい

という、おなじみのアトウォーターの換算係数になるわけです。

 エネルギーの計測だけなら燃やしたほうが楽かとも思いましたが、消化吸収率とか計測しなくちゃいけないとなると、結構面倒くさそうです。成分表示するときにはどうせ炭水化物・脂質・たんぱく質も表示しなくちゃいけない=それぞれの量を計らないといけないんだから、成分表と同じく各成分に換算係数かけて出したほうが楽なような気がします。

 それでも、実際に燃やして計測している食品会社もあるんでしょうかね。

*1:あと、還元糖のベルトラン。ビタミンとかは実験法の名称覚えてない。