歯の本数にしたがえば、ヒトは犬よりも肉を食う

 歯の本数から理想的な食べ方がわかる、ということを聞いたことがあります。曰く、ヒトは門歯が何本犬歯が何本、臼歯が何本だから、その割合からいってあまり肉は食べずに植物性のものを多く摂りましょうね、といった具合です。たとえば、こんな風に。

ヒトの歯は永久歯で32本(乳歯で20本)あります。奥の臼歯は穀物をすりつぶすための歯で上下とも5対20本、前歯(切歯)は野菜をかみ切るための歯で上下2対づつ8本、犬歯(糸切り歯)は繊維の多いもの(例えば、サトウキビとか肉とか)を引き裂くための歯で上下1対づつ4本あります。その歯がもっている働きに合わせて食べることをおすすめしています。つまり、ヒトは臼歯:切歯:犬歯=米や麦などの穀物:野菜や海草:繊維の多い固い野菜または肉・魚=20本:8本:4本=5:2:1となります。

http://www.d4.dion.ne.jp/~ippo/howtoeat/063.html

 はじめてこの話を聞いたときには、上手いこと言うなと感心したものです。歯は構造によって機能が違いますから、その違いに着目して「こういった構造のものがこういった割合で存在しています、したがってこういった割合で食べるのが身体にいいんです」と言われれば、科学的な感じがして思わず納得してしまいます。

 しかしながら、ほかの動物はと辺りを見渡してみれば、この説得力が嘘説得力以外のなにものでもないことがわかります。たまたま見つけた『農業の基礎』*1によれば、

切歯 犬歯 前臼歯 後臼歯 合計
ウシ 4 0 6 6 32
イヌ 6 2 8 5 42
ブタ 6 2 8 6 44
ニワトリ 0 0 0 0 0

となっているそうです*2

 ちなみにヒトは前述の通り、

切歯 犬歯 前臼歯 後臼歯 合計
ヒト 4 2 4 6 32

です。

 これだけではどの割合でなにを食べればいいのかわかりづらいので、歯の本数全体に対する割合(%)にしてみれば、

切歯 犬歯 臼歯
ウシ 25% 0% 75%
イヌ 29% 10% 62%
ブタ 27% 9% 64%
ニワトリ 値なし 値なし 値なし
ヒト 25% 13% 63%

となります。

 ウシは牧草ではなく穀物主体が正しく、また犬は肉よりも野菜を、しかしそれらはあくまで副菜であって、主食には穀物をね! が正しい食生活のようです。

 われらが人類は、肉食獣の犬とほぼ同じ食生活ですが、犬よりも若干多く肉を食べるのが理想みたいです。みなさん、胸を張って肉を食べましょう。

*1:新版 農業の基礎 (農学基礎セミナー)

*2:切歯〜後臼歯までは片側のみの本数なので、合計はそれの2倍になっています。わざわざここでニワトリまで載せたのは、「歯の本数で食べるものが決まる→歯がない→霞を食べる超越者」説をでっち上げようかと思ったから。