食育

誤解していた地産地消

どうやら、地産地消というのは、今までその土地で食べてきたような伝統食の栄養学的な欠点の改善を、それまであまり栽培されてこなかった農産物をとり入れることで、地元の生産物だけでも十分な栄養バランスが確保できることを目標にした取り組みであったよ…

食育の技法

「砂糖についてちょこっと語ってみた」という素晴らしい記事があります。僕も以前コメント欄で、砂糖の摂取でカルシウム排泄が増えるという話を聞いて機序を調べたことがあったので、この記事は大変興味深く読みました。それと同時に、記事のコメント欄で紹…

『「食育」批判序説』を頑張って読んだのさ。

さて、本日は先日も取り上げた『「食育」批判序説』*1につきまして、内容に踏み込んで見ていきたいと思います。 書いているうちにとても長くなってしまったので、最初に構成を記しておきましょう。 「朝ごはん」運動への批判 ケトン体研究詳細 断食療法 それ…

『「食育」批判序説』批判

「食育」批判序説――「朝ごはん」運動の虚妄をこえて、科学的食・生活教育へ作者: 森本芳生出版社/メーカー: 明石書店発売日: 2009/08/01メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 3人 クリック: 27回この商品を含むブログを見る いやぁ、すごい本です。 以前か…

食という字は「人」を「良くする」と書きます

というのは、食育の末端にいるとそれなりに聞く言葉です。「人」を「良くする」、食とは本来そのようなものなのだから、我々も原点に立ち戻り、そのような食べ物を選んで食べましょう。なんて具合に講演を締めくくるのです。 しかしながら、これは本当なので…

「ニワトリ狩り」の悪影響

豚を飼育して最後には食べる「いのちの授業」というのがあったけれども、実はそれには前身があったのかもしれません*1。「食べる」思想 ~人が食うもの・神が喰うもの作者: 村瀬学出版社/メーカー: 洋泉社発売日: 2010/03/06メディア: 単行本(ソフトカバー)…

歯の本数にしたがえば、ヒトは犬よりも肉を食う

歯の本数から理想的な食べ方がわかる、ということを聞いたことがあります。曰く、ヒトは門歯が何本犬歯が何本、臼歯が何本だから、その割合からいってあまり肉は食べずに植物性のものを多く摂りましょうね、といった具合です。たとえば、こんな風に。 ヒトの…

「まごわやさしい」の記事に対する絶賛記事

ほぼ全文引いてしまう無礼をお許しください。 「まごわやさしい」これって全文は「おかあさんはやすめ ははきとく まごはやさしい」で、要するにおばあちゃんの作ってた昔ながらの和食は最高、モダンなお母さんの作るおしゃれな洋食なんてダメ、という嫁いび…

食料自給率を上げろ上げろと言うけれど

先ごろ一〇〇%輸入に頼っているシンガポールの高官に食料安全保障という考え方について聞きましたら「イラクのようなことをしない限り、食料がカットされることはないと思う」という答えでした。 (『食の文化フォーラム―国際化時代の食』p66) 話者はこの…

感情的な食育と、ちょっとの小話

とある研修会でお話をされたお偉いさんはその昔、まだうら若き時分には小学校に勤めていて、コーラは悪魔の水ですと子どもたちに教えていたそうです。その甲斐あってか、学校内だか学校の近くだかに自販機ができても子どもたちは誰も買わなかったし、どころ…

「シンボルとしてのスローフード」——または、食育とスローフード

食文化から社会がわかる! (青弓社ライブラリー)作者: 原田信男,竹内由紀子,中村麻理,矢野敬一,江原絢子出版社/メーカー: 青弓社発売日: 2009/10/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 31回この商品を含むブログ (7件) を見る パルテノン多摩で行われた講演…

食事はちょっとよくすればいい

「食育」はいいが、思わぬところで子どもの心を傷つける。小学5年の時だった。家庭科の朝ごはん調べの質問に「レタスとトマトのサラダ。ベーコンエッグとジャムトースト。牛乳も飲んできました。」と答えて先生に褒められた。 うそばっかり。その朝は自分で…

地産地消って実はとっても厳しいの?

かと疑いたくなる部分が、先日も挙げた引用文にあるのです。 でも、地元食品を支持する主張 (地産地消)、つまり消費者になるべく近いところで生産された食品を食べようという主張は文句なしなんじゃないの? なるべく食物に移動させず、結果として炭酸ガスも…

地産地消についての疑問——生産と輸送の環境コスト

大きな声では言えませんが、地産地消ってそんなに頑張って推進するべきものなのかどうか、実はずっと疑問に思っているのです。たぶんことの発端は「倫理的な食べ物はかえって有害かもしれない。」を読んだことでしょう。当時まだ今に比べれば年端も行かない…

「朝食はいい! それもご飯食がいい!」との主張

引き続き朝食をCiNiiってるわけなんですが、「ご飯朝食を摂取した学生とその成績」において、上記のような主張がなされてたのでした。 著者は大学・短大の先生 自分の講義の最後に、毎回小テストを行った。その際に、朝食を食べてきたかどうか、食べてきたと…

できれば自信を持って「朝食は大切」と言いたい

朝食と学力テストの点数の関係というのはよく言われるんですが、これには大抵「朝食自身ではなく生活習慣や家庭環境の影響」が、というような注意書きがついてきます。また、その種のテストにはある程度の蓄積がものをいうでしょうから、朝食自身が脳の働き…

マクロビ給食——もしくは、食育への危惧

マクロビオティック 給食の研修会なんてあることに驚きつつ、でもそういえばマクロビ給食ってどっかで見たなと思ったら、学校給食の2007年度3月号です。最初読んだときは、給食をこんな自分の趣味に使っていいんだと驚いたものだけど、いやはや、東北地方で…

若者の野菜摂取量は減少しているのか、増加しているのか。

野菜の食べている量を年代別にグラフにすればわかるように、野菜をたくさん食べているのはおじいちゃんおばあちゃんたちだ。ためしに2006年の年代別野菜摂取量をグラフにすると、このようになる(資料は国民健康栄養調査。以下についても同様に、資料は国民…

一神教から日本の食を考える――@成蹊大学

成蹊大学の公開講座が面白そうだったので行ってみた。しかしこのタイトルはちょっと偽りありだと思う。「一神教から〜」というよりは、イエスがいかに食卓を変えたか、だ。 どうやらユダヤ教は不浄なことを嫌う宗教で*1、そのため食に関しても厳しい規則が決…

「日本型食生活」をやめよう

すでに、コメをめぐる歴史学や民俗学の研究が示すように、この日本列島にはコメを常食としない集団がずっと存在していたし、また日本人が広くコメを食するようになったのは戦時中以降のことであったといわれる。おそらく日本人全体が白米を腹いっぱい食べれ…

食育の気持ち悪さについて――食の共同体

食の共同体―動員から連帯へ作者: 池上甲一,岩崎正弥,原山浩介,藤原辰史出版社/メーカー: ナカニシヤ出版発売日: 2008/05メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 78回この商品を含むブログ (9件) を見る たぶん僕は、この本の半分も理解していないんじゃないか…