罰は効果的でない、と行動科学はいう。

うまくやるための強化の原理―飼いネコから配偶者まで

うまくやるための強化の原理―飼いネコから配偶者まで

 まったく詳しくないので、単なる読書メモに過ぎないのですが。

 著者によれば、望ましくない行動をやめさせる方法は7種類あるそうです。

  1. 抹殺法
  2. 嫌子
  3. 消去法
  4. 対立行動法
  5. 合図法
  6. 他行動法
  7. 動機法

 このなかで、罰を与えることによってある行動をやめさせようとするのが「嫌子法」です。嫌子、というのが罰のことですね。しかしながら、これはあまりうまい方法ではないとのことなのです。

しかし、問題を起こしたからといって嫌子を与えるのは、行動修正のやり方としてはうまいやり方ではない。多くの場合、嫌子の提示は何の効果ももたらさない。
(p114-115)

 嫌子法がよろしくない一番の理由は、それが効果的でないから、ではありません。もちろん効果がないこと自体も大きな要因でしょうが、さらに重要なことには、

嫌子を与えたのに効果がないと(略)「嫌子は効果がないなあ、なにか別の方法を使ってみるか」とは普通考えないのではないか。そうではなくもっと強い嫌子を与えようとするのではないか。
(p115)

というように、エスカレートする方向に行ってしまうことが、嫌子法を避けるべき一番の理由でしょう。

 ではなぜ、嫌子法は効果的でないのでしょう?

一つの理由は、問題行動が起こったら、すぐにその場で与えないからである。ずっとあとで嫌子を与えても、その行動が減らないということは行動の科学によって証明されている。
(p115-116)

嫌子を与えたり、嫌子を与えるぞと脅しても、悪い行動をどう改めればいいかを教えることができない。嫌子を与えられて覚えることといえば、この次は捕まらないようにうまく切り抜けることだ。
(p117)

 このように、あまり効果的でない嫌子法が、なぜよく使われてしまうのでしょう? 著者は次の3つを挙げています。

  • そうは言っても、嫌子を使ってうまく行ったことがあるので、その経験が嫌子法の使用を強化している。
  • 復讐の意味がこめられている。(『嫌子を与える人は、相手の行動が改まるかどうかなどは、本当は気にかけていないのかもしれない』p118)
  • 嫌子を使うことで、相手に対して優位であることを誇示する、または優位に立てる。

 最後のはものすごくわかりやすい。

 したがって、著者の結論はこうです。

嫌子を使いそうになったらこう考えなさい。「自分はこの犬、この妻、この夫、この社員の行動を改めたいと思っているのか? もしそうなら、やるべきことは教育や訓練である」
(p120-121)