高血糖からの動脈硬化

 昨日メタボリックシンドロームに関する講演を聞いて、イメージできなかった高血糖から動脈硬化になるメカニズムをお勉強。放送大学教材食の科学の立ち読み記憶とネットで調べたことをあわせると、どうもこれはアミノカルボニル反応(メイラード反応)が影響しているらしい。

 先ず、糖のアルデヒド基とタンパク質のアミノ基が結合し、可逆的なシッフ塩基が形成されます。 シッフ塩基はアマドリ転位によって安定なアマドリ化合物になります。ここまでを初期反応と呼びます。 後期反応ではアマドリ化合物に脱水、縮合、酸化、転位などの複雑な多数の反応によって3-デオキシグルコソン(3DG)、メチルグリオキサールなど反応性の高いジカルボニル化合物を産生します。 さらに多数の反応経路を経て、不可逆的な最終産物であるAGEsが生成します。
(中略)
 皮膚のタンパク質であるコラーゲン部分で糖化(メイラード反応)が生じると、タンパク質中のリジン残基のアミノ基あるいはアルギニン残基のグアニジル基と糖のカルボニル基が非酵素的に反応し、シッフ塩基、アマドリ生成物を経た後で、タンパク質とタンパク質を結ぶ架橋構造を形成します。 そしてこの架橋構造が形成されると分子が硬くなり、皮膚本来の弾力性が失われてしまいます。

アンチエイジングと老化

 血糖であるグルコースアルデヒド基とたんぱく質のアミノ基が結合(糖化)。たんぱく質の架橋構造ができる。弾力性が失われて、動脈硬化症発生と。

 また、アミノカルボニル反応なのは一緒でも、ちょっと違った方向からも動脈硬化症を促進するみたい。

 特に糖尿病が動脈硬化症に対して促進的に作用するメカニズムとしては、LDLのグリケーションの観点から、1)LDLがメイラード反応前期で修飾を受けたglycated-LDLは、LDLと比して、LDL受容体に対するリガンド活性が低下しており、血中消退速度(クリアランス)が遅延し、結果として血中コレステロール値上昇を惹起する。2)LDLが後期反応による修飾を受けAGE-LDLとなり、AGEレセプターのリガンドとして、細胞に直接作用し、泡沫細胞を形成するという2つが考えられている。現在最も受け入れられているのは、前者の糖化LDLの代謝遅延説であり、LDLが糖化(グリケーション)されるとLDL受容体に対する認識が低下し、クリアランス遅延が起こり血中LDLコレステロールが上昇し、動脈硬化症の発生、進展に促進的に作用するという考え方である。また、動脈硬化症巣のAGE-LDLは、マクロファージスカベンジャー受容体を介してマクロファージに取り込まれ、マクロファージを直接的に泡沫化し、動脈硬化の発症、進展に関与している可能性も示唆されている。

http://www.dojindo.co.jp/letterj/106/reviews_01.html

 この場合、グルコースとアミノカルボニル反応を起こすのは血管壁ではなくてLDLだ。アミノカルボニル反応を受けたLDLはLDL受容体に取り込まれにくくなって、血中LDLが増加する。そのため、酸化LDLも増えて、それが血管壁内に入ってマクロファージに取り込まれて、動脈硬化へ進展していくわけだ。

 また、活性酸素が増えるから、という説明もあった。

 実際、高血糖で酸化LDLが増えるという報告があります。現在、このメカニズムは完全には解明されているとは思えませんが、今のところもっともらしい説明としては、還元糖のアルデヒド基と蛋白のアミノ基とがシッフ塩基によって結合し(脱水反応;アミノ基の水素が引き抜かれることにはなっている)糖化蛋白ができ(Maillard反応;メイラード反応とかメイヤー反応とか呼ばれる、フランス語ならメィヤール反応がより正確でしょう)、様々な中間生成物を経て最終的にAGEとよばれる産物(ピロールアルデヒドなど)になり、その過程でスーパーオキシドアニオンが生成され(どうしてかは分からないが…)、微量に存在する鉄や銅イオンによってヒドロキシラジカルが発生し、脂質を過酸化する(LDLに結合してるリン脂質中の不飽和脂肪酸が酸化されたり酸化コレステロールが生成したりそれらがさらに分解したものができてきたりと、これがすなわちLDLの酸化ということ)ことが促進される、という説明がなされています。

http://biomol.gifu-u.ac.jp/~molbio3/gentechkohyo01.html

 この場合でもきっかけはやはりアミノカルボニル反応で、それによってできたシッフ塩基(なにのことやらさっぱりわかってないけど)がさらに変化していく過程で活性酸素ができる。その活性酸素によってLDLが酸化されて、でそのあとは血管壁内に入ってマクロファージが……という動脈硬化の進展につながっていくんだろう。

 それにしても、こんなところでアミノカルボニル反応が出てくるなんて驚きだ。だって、アミノカルボニル反応って言ったら、パンの焼けた色と香ばしい匂いとか、そういうやつでしょ。食品学に出てくるやつじゃん。

 血管内も香ばしくなってんのかね。