意外な、脂肪摂取量

 「日本型食生活」をやめようでは脂肪摂取量の下限を見たけど、上限値の設定理由が面白かったので見てみよう。

 最近のメタ・アナリシス(n-3系脂肪酸に関する研究は除く)では、総脂質摂取量と総死亡率との関連は認められず、アメリカ女性の大規模コホート研究でも総脂質摂取量と冠動脈性心疾患の罹患率との関連も認められていない。また総脂質摂取量とがんとの関連も不明瞭である。乳がんに関するメタ・アナリシスでは、コホート研究と症例対照研究の結果は一致せず、大腸がんとの関連も認められていない。
(『厚生労働省策定 日本人の食事摂取基準〈2005年版〉』p51-52)

 要するに、直接的に疾患のリスクを上昇させる明確な根拠はなにもないということだ。ただ、高脂肪食を食べるとその分エネルギー過剰状態になって肥満を引き起こしやすいこと、高脂肪食を食べると飽和脂肪酸を摂りすぎることが考えられ、その結果血中LDL-コレステロールが増えて心疾患のリスクが上昇すること。これらを考慮して、

脂肪エネルギー比率30%で、血漿コレステロール、LDL-コレステロール中性脂肪、総コレステロール/HDL-コレステロールの減少および体重の減少が認められている。
(同p52)

から、30%エネルギー比が上限と定められただけらしい。

 肥満は脂肪摂取量よりも総エネルギー摂取量が問題だから、直接的な原因ではない。またほかの血清プロフィールについては、摂取する脂肪酸の種類による。飽和脂肪酸を摂取すれば心臓病のリスクは上昇するが、不飽和脂肪酸の摂取ではこれが逆に低下する。

この2つの効果が互いに打ち消しあうので、脂肪の総摂取量が高くても、虚血性心疾患の発生率は高くならない。
(「ヘルシーな食事の新しい常識日経サイエンス 2003年4月号 p121)

 だから総エネルギーをしっかり制限して、摂取脂肪酸の種類を選べば、脂肪の摂取量はそれほど問題ではないという考え方もある。

食事中の脂肪と炭水化物が両方とも体によいものなら、それぞれのカロリーが何%になるかをあまり気にする必要はないだろう。
(同 p125)

 とかく悪者になって控えめにと言われる脂肪だけど、要するにカロリーが多いことが問題なだけじゃないかと思えてくる。ただ、だいたいの場合脂肪をよくとる人は肉からとる人が多いから、飽和脂肪酸の摂取量がやっぱり多くなるから気をつけないといけないだけでね。