不足している栄養素——ビタミン編

 先日はミネラルの不足を見ましたが、今回はビタミンの不足を見てみましょう。

ビタミンA

 まずはビタミンAです。上は男性、下は女性の表で、単位はμgREです。

年齢 平均値 中央値 推定平均必要量 推奨量
18-29歳 602 412 550 750
30-49歳 570 393 550 750
50-69歳 620 490 500 700
70歳以上 673 495 450 650
年齢 平均値 中央値 推定平均必要量 推奨量
18-29歳 492 390 400 600
30-49歳 537 424 450 600
50-69歳 625 510 450 600
70歳以上 611 467 400 550

 男女とも、平均では推定平均必要量を超えていますが、中央値で見れば男性の69歳以下、女性の49歳以下でそれを下回っています。特に男性の若年層では大きく下回っていると言えるでしょう。

ビタミンD

 次はビタミンDです。上は男性、下は女性の表、単位はμgです。

年齢 平均値 中央値 目安量
18-29歳 6.7 3.1 5
30-49歳 7.8 3.7 5
50-69歳 10.2 6.8 5
70歳以上 9.4 6.2 5
年齢 平均値 中央値 目安量
18-29歳 6.7 3.2 5
30-49歳 6.7 3.3 5
50-69歳 9.0 6.1 5
70歳以上 8.2 5.4 5

 49歳以下の中央値で、目安量を下回っています。どうでもいいことですが、50歳以上と未満で摂取量にものすごい差があります。なんの嗜好の変化なんでしょうか*1

ビタミンE

 次はビタミンEです。上は男性、下は女性の表、単位はmg αトコフェロール当量です。

年齢 平均値 中央値 75パーセンタイル 目安量
18-29歳 7.3 6.6 9.3 9
30-49歳 7.9 6.7 8.9 8
50-69歳 9.0 7.1 9.7 9
70歳以上 10.0 6.5 9.3 7
年齢 平均値 中央値 75パーセンタイル 目安量
18-29歳 8.0 6.4 8.7 8
30-49歳 8.2 6.2 8.4 8
50-69歳 10.2 6.7 9.3 8
70歳以上 12.2 6.1 8.6 7

 中央値で見ると、男女どの年代でも目安量に届いていません。75パーセンタイルとだ、だいたいの年代で「やっと」超えている感じです。

ビタミンB1

 次はビタミンB1です。上は男性、下は女性の表、単位はmgです。

年齢 平均値 中央値 75パーセンタイル 推定平均必要量 推奨量
18-29歳 1.12 0.89 1.30 1.2 1.4
30-49歳 1.27 0.88 1.16 1.2 1.4
50-69歳 1.52 0.90 1.22 1.1 1.3
70歳以上 2.72 0.82 1.16 0.8 1.0
年齢 平均値 中央値 75パーセンタイル 推定平均必要量 推奨量
18-29歳 1.12 0.77 1.03 0.9 1.1
30-49歳 1.21 0.76 1.02 0.9 1.1
50-69歳 1.63 0.81 1.09 0.9 1.0
70歳以上 1.85 0.70 0.95 0.7 0.8

 女性の70歳以上で満たしているほかは、男女すべての年代で推定平均必要量を下回っています。特に男性の30-49歳では、75パーセンタイルでも推定平均必要量を下回っています。

ビタミンB2

 次はビタミンB2です。上は男性、下は女性の表、単位はmgです。

年齢 平均値 中央値 75パーセンタイル 推定平均必要量 推奨量
18-29歳 1.32 1.13 1.55 1.3 1.6
30-49歳 1.34 1.09 1.47 1.3 1.6
50-69歳 1.54 1.24 1.58 1.2 1.4
70歳以上 1.74 1.24 1.66 0.9 1.1
年齢 平均値 中央値 推定平均必要量 推奨量
18-29歳 1.17 1.00 1.0 1.2
30-49歳 1.43 1.03 1.0 1.2
50-69歳 1.49 1.17 1.0 1.2
70歳以上 1.49 1.10 0.8 0.9

 女性はすべての年代で推定平均必要量を上回っている*2ものの、男性では49歳以下の中央値で、推定平均必要量を満たしていません。

ナイアシン

 次はナイアシンです。上が男性、下は女性の表で、単位はmgNEです。

年齢 平均値 中央値 推定平均必要量 推奨量
18-29歳 15.9 13.9 13 15
30-49歳 17.4 15.9 13 15
50-69歳 19.3 17.4 12 14
70歳以上 17.0 14.6 9 11
年齢 平均値 中央値 推定平均必要量 推奨量
18-29歳 13.3 12.0 13 15
30-49歳 14.6 13.5 13 15
50-69歳 15.8 14.3 12 14
70歳以上 13.6 12.2 9 11

 29歳以下の女性では中央値で推定平均必要量を満たしていませんが、ほかの年代・性別ではそれを満たしています。特に男性の30歳以上、女性の50歳以上では中央値で推奨量を満たしていますので、不足のリスクは極めて低いと言えるでしょう。

ビタミンB6

 次はビタミンB6です。上が男性、下が女性の表で、単位はmgです。

年齢 平均値 中央値 推定平均必要量 推奨量
18-29歳 1.28 1.09 1.1 1.4
30-49歳 1.75 1.16 1.1 1.4
50-69歳 1.98 1.35 1.1 1.4
70歳以上 3.13 1.29 1.1 1.4
年齢 平均値 中央値 推定平均必要量 推奨量
18-29歳 1.34 0.96 1.0 1.2
30-49歳 1.62 1.00 1.0 1.2
50-69歳 1.97 1.17 1.0 1.2
70歳以上 2.28 1.09 1.0 1.2

 男女とも29歳以下の中央値で、推定平均必要量を満たしていません。逆に70歳以上の中央値と平均値の開きは凄まじく、なにやら一部にものすごく摂取している人がいるようです。たとえば、男性の90パーセンタイルを見ると摂取量は5.73mgなんですが、これが99パーセンタイルとなると、75.58mgになります。桁が違う。10倍以上も摂ってます。これでは、平均したときにべらぼうに数字が引き上げられるわけです。

パントテン酸

 次はパントテン酸です。上が男性、下が女性の表で、単位はmgです。

年齢 平均値 中央値 目安量
18-29歳 5.8 5.6 6
30-49歳 5.7 5.4 6
50-69歳 6.1 5.9 6
70歳以上 5.8 5.6 6
年齢 平均値 中央値 目安量
18-29歳 4.8 4.7 5
30-49歳 5.0 4.8 5
50-69歳 5.5 5.3 5
70歳以上 5.1 4.9 5

 女性の50-69歳以外では、すべて中央値で目安量を満たしていません。これはものすごく意外です。と言うのも、パントテン酸ってどこにでもあるもので、欠乏することはないと言われていたはずです。

 パントテン酸は、ギリシャ語で「どこにでもある酸」という意味で(略)食品中に広く存在し、腸内細菌によっても合成される*3ため、通常欠乏症はおこらない。
(『生化学 (栄養科学シリーズNEXT)』)p92

 その、どこにでもある、欠乏することはないもので、どうして目安量が満たされていないんでしょう。

 調べてみると、面白いことがわかりました。欠乏症を実験で再現できないので、推定平均必要量はわからない。平成13年の国民栄養調査の中央値で欠乏症が出たという話は聞かないから、それじゃあその値を目安量としましょうと、こういうことみたいです。

 小児および成人の摂取量は、平成13年国民栄養調査結果の中央値によると4〜7mgであり、日本人の若年成人女性を対象とした食事調査の報告によると平均値は4.6mg/日である。この摂取量で欠乏症が出たという報告はないので、今回は、性・年齢階級別の平成13年国民栄養調査結果の中央値を目安量とした。
(『厚生労働省策定 日本人の食事摂取基準〈2005年版〉』p103)

 つまり上の表で、ほぼすべての年代で目安量を下回っているのは、不足のリスクがあるというより、ただ単に平成13年よりもパントテン酸の摂取量が少なくなっている、ということを表しているみたいです。

ビタミンC

 次は、みんな大好きビタミンCです。上は男性、下は女性の表で、単位はmgです。

年齢 平均値 中央値 推定平均必要量 推奨量
18-29歳 103.3 65.5 85 100
30-49歳 87.7 65.1 85 100
50-69歳 136.2 100.6 85 100
70歳以上 143.4 113.3 85 100
年齢 平均値 中央値 推定平均必要量 推奨量
18-29歳 97.9 64.6 85 100
30-49歳 110.0 73.1 85 100
50-69歳 166.6 118.9 85 100
70歳以上 160.1 120.0 85 100

 男女とも、49歳以下で推定平均必要量を満たしていません。ビタミンDもそうでしたが、この49歳以下と50歳以上の年齢階級でのビタミンC摂取量の差はなんでしょう。

本日のまとめ

 取り上げなかったビタミンK、B12、葉酸については、男女各年代の中央値で目安量や推定平均必要量を満たしていました。逆に言えば、健康・栄養調査で摂取量が調べられているビタミン12種類のうち、なんの問題もなく充足しているのはビタミンK、B12、葉酸、それからパントテン酸の4種類のみということになります。

 不足しているものをまとめてみれば、

  • ナイアシンとビタミンB6は、29歳以下で不足している。
  • ビタミンD、B2、Cは、49歳以下で不足している。
  • ビタミンAは、男性69歳以下、女性49歳以下で不足している。
  • ビタミンE、B1は、70歳以上の女性をのぞいて不足している。

となります。

 こう見ると、なるほど、高齢者になるほど充足しているものが多くなって、「若者の壊れた食生活」なるものを補強してしまいそうな気がします。ビタミンDとCに特徴的でしたが、50歳以上と未満で摂取量が大きく違うものもありました。

 また、平均値で見る危うさみたいなものも感じました。すべての項目で平均値は中央値よりも高く、A、D、B6、Cなどは、かなり大きくはなれていました。特にB6は、90パーセンタイルと99パーセンタイルの人で10倍以上も摂取量が違う、本当にごく一部の人がものすごい量摂取していて、平均値を引き上げることにつながっています。平均で語ると、不足のリスクを読み違えることになるでしょう。

 ミネラル、ビタミンと見てきましたが、ここらへんをあわせて考えると、飽食日本なのに栄養足りてない可能性が高そうで、まだまだ「栄養不足の栄養学」も捨てきれないのかもしれません。

*1:もちろん、年齢階級で見ているから、49歳と50歳で急に摂取量がかわるわけではないんだろうけど。

*2:とはいえ、18-29歳では中央値=推定平均必要量だから、50%くらいの人に不足のリスクがあるってことだけど。

*3:もっとも、腸内細菌から合成される部分に関しては、「量やヒトの栄養における役割については知られていない」(『健康・栄養食品アドバイザリースタッフ・テキストブック』p28)らしいけども。