朝食を食べないと太るとか太らないとか

 朝食を食べないと太るという言説があります。それはたとえばこんな具合です。*1

朝食を欠食する児の身長は,3歳時から小学4年時にかけて低値を呈した.体重は,3歳時および小学1年時では低値を呈したが,その後逆転し,小学4年時および中学1年時では朝食を欠食する群の肥満児出現頻度が有意に高かった.

朝食欠食と小児肥満の関係

 わたくしは半ばこの種のことを常識だと思っていて、そりゃ朝食食べないと飢餓状態から代謝が落ちて太りやすくなるんだよなんて知ったかぶりをしたことも、一回くらいあったかもしれません。

 ところが、ほかでたまたま見つけたデータを見たところ、朝食欠食と肥満は結びついていないのです。

欠食あり 欠食なし p値
身長(cm) 158.0±4.8 159.5±5.1 0.016
体重(kg) 52.6±7.6 54.5±7.4 0.031
BMI(kg/m^2) 21.0±2.8 21.4±2.6 0.245
摂取総エネルギー量(kcal/日) 1740.6±552.0 1998.9±679.3 0.001
大腿骨頸部骨密度(g/cm^2) 0.88±0.10 0.92±0.11 0.006
腰椎骨密度(g/cm^2) 0.99±0.12 1.00±0.10 0.165

「食習慣と骨粗鬆症*2」の「若年女性の朝食欠食習慣と摂取栄養素との関係」より抜粋です。健康な骨の獲得のためには適切な運動、適切な活性型ビタミンD濃度、適切な栄養素摂取と、適切な体重が必要であるので、朝食欠食によって体重や摂取栄養素が低下するのであれば、朝食欠食者は朝食摂取者に比べて骨密度が低いに違いないと考えた著者らが、19〜25歳の女性を対象に調べたものです。これを見れば、身長もそうですが体重でも朝食欠食者は有意に低く、BMIでは有意な差がないとなっています*3

 よくよく見てみればBMIでは有意差なしなので、朝食欠食ではむしろやせるんじゃないかというのは早合点なのですが、しかし朝食欠食は太るという、わたくしの持っていた常識とは相容れない結果となっています。

 そもそも、

 朝食の欠食の体格指数(body mass index:BMI)に対する影響は正・負の両方が報告されている。
(「食習慣と骨粗鬆症」)

のだそうです。したがって最初っからわたくしの常識は誤っていたのですが、仮に関連性があったとしても、

朝食を欠食する児の生活習慣では,3歳時から「起床時刻が遅い」,「就寝時刻が遅い」,「睡眠時間が短い」,「夜食頻度が多い」,「間食頻度が多い」,「外食頻度が多い」,「インスタント麺を食べる頻度が多い」,「母と朝食を食べない者が多い」,それに加えて小学1年時以降は「テレビ視聴時間が長い」,「ひとりで朝食を食べる」傾向がみられた.(略)朝食を欠食する習慣は3歳時から認められ,その他の生活習慣と連鎖し小学4年時以降の肥満を引き起こすことが示唆された.

朝食欠食と小児肥満の関係

とのことなので、朝食欠食自体が代謝を云々してどうのこうの、というようなわかりやすい関係ではなくて、さまざまな生活習慣とリンクした結果の肥満である可能性が高いです。

 要するに、朝食単体を持ち出して「食べなければ太る」とかいう単純な話は鵜呑みにしてはいけないということなのでしょう。あー、勉強になった。

*1:要旨だけしか見ていない。本文未読。

*2:尾上佳子, 太田博明: 臨床栄養 Vol. 114 No.5 2009.5

*3:今回のテーマとは異なるので蛇足ながら、大腿骨頸部骨密度は著者の推測通り朝食欠食者で低くなっています。さらに蛇足ながら、CaもビタミンDも、摂取量は朝食欠食者が有意に低いという結果です。