霜降りイコールおいしさだ
- 作者: マーク・シャツカー,野口深雪
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/12/17
- メディア: 単行本
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霜降りイコールおいしさだ。僕がテキサス工科大学で会った食肉科学者は、もれなくこう口をそろえたし、研究に研究を重ねた結果立証もされている。(p34)
えー、アメリカ人をしてそうなのですか。
確か、「欧米人は歯ごたえのある赤身肉を好む」「欧米人はたくさん肉を食うのに、霜降りなんて脂が多かったらすぐに飽きて食べられなくなる」「霜降りなんてものをありがたがるのは日本人くらいなものだ」なんて話をどこぞで聞いた記憶があったので、この記述にはとても驚いたのでした。
しかし読み進めていけば、記憶にあるどこぞで聞いた話では「欧米人」と乱暴に一括りにしていた人たちの中にも、異なった好みがあるのだとわかります。
(USDAでは若い牛の肉を評価し、成牛の肉には懐疑的な見方をしているが)それとは対照的に、二歳未満の牛の肉はフランス人には味気ないと見なされる。牛が成熟すると、筋肉――赤身の多い肉とも言える――のミオグロビンが増える。これによって風味が増すのだとメッツァーは教えてくれた。(p100)
というように、フランスでは赤身肉の評価が高いです。スコットランドでもイタリアでもこの状況は同じで、もちろん多少の霜降りが必要なのは認めつつも、脂からではない「牛肉の風味」のあるものを高く評価しています*1。
さらに、著者は日本にも足を運ぶのですが、日本の(高級肉の?)霜降りは、アメリカの霜降りよりも脂分の多いものみたいです。
日本では、牛肉といえばとにかく霜降りなのだということが、僕にもだんだん分かってきた。アメリカでも霜降りは珍重されるものの、いわゆるアメリカンステーキの一般的なイメージは白ではなく赤。(略)かたや日本では、どのステーキ肉も本体の半分以上が白いのだ。(p195)
アメリカ人も霜降りについてあれこれ言うけれど、霜降りがオリンピック競技になったらメダルを独占するのはたぶん日本人だ。(p212)
というわけで、日本で「うわー、すごいいい肉だねー」なんて言われる霜降り肉に比べれば、霜降り好きのアメリカンにしたところで赤身肉に近いに違いないようなのでした。
そういう意味では冒頭のどこぞで聞いた話は正しかったようですし、
(石焼のA5神戸牛を食べて)僕はこの時点で、脂を食べ過ぎたときによく起こる現象――疲労と倦怠感、そして猛烈に愚かな気分――と戦っていた。(略)生のキュウリが食べたい。ドレッシングのかかっていないサラダを今すぐ食べたい。(p199)
と言いますから、欧米人も霜降り肉だったらそんなにたくさん食べられないという部分も、おそらくは正解なのでした。
*1:といっても、それらはやっぱり希少なもののようで、著者は探し出して食べることになるから、高く評価するといっても一般レベルでは若い牛を食べていそう。