牛乳よりもヨーグルトのほうがCa吸収がいい、らしい。

 ヨーグルトは牛乳を乳酸菌により乳酸発酵させてゲル状にしたもので、牛乳の主要糖である乳糖は分解されて乳酸になっている。(略)たんぱく質やカルシウムは、牛乳より吸収されやすくなっている。
(『健康・栄養食品アドバイザリースタッフ・テキストブック』p55)

 えー、そうなの? 乳糖分解されているから、カルシウムの吸収は悪くなってるものだと思ってた。

ミルクがカルシウム源として優れた食品であるというのは、たいていの食物より多くのカルシウムをふくんでいるからだけでなく、腸でのカルシウム吸収を促進するある物質をふくんでいるからである。その物質とは、ラクトーゼ*1にほかならない(略)
(『食と文化の謎 (岩波現代文庫)』p191)

たとえば、チーズ、ヨーグルト、発酵乳はカルシウムの豊富な乳製品であり、ラクトーゼをうけつけないひとでも、不快な症状をおこすことはない。しかし、ミルクをチーズ、ヨーグルト、発酵乳にかえると、ラクトーゼがもつカルシウム吸収を高めるはたらきをなくさせてしまう。
(同 p203)

 だから「牛乳飲めない人はヨーグルトをね!」なんていうのは、そりゃカルシウム自体は豊富に含まれているから摂取カルシウム量は増えるかもしれないけど、でも牛乳の利点をなくさせてしまっててあまりいい方法じゃないなあ、なんて思ってた。

 でも、なんででしょ。乳糖がカルシウム吸収を助けているであろうに、その乳糖はなくなってしまっているであろうに、ヨーグルトはどうして牛乳よりもカルシウム吸収率がよくなってるんだろう。

 カゼインホスホペプチドとか関係してるんだろうか。

Caを効率よく吸収させる特定保健用食品としては、クエン酸リンゴ酸Ca(CCM)やカゼインホスホペプチド(CPP)を含む飲料がある。(略)CCPは、乳たんぱく中の成分で、Caに結合して安定化しその吸収を助ける。
(『健康・栄養食品アドバイザリースタッフ・テキストブック』p293-294)

 ヨーグルトは牛乳の主要たんぱく質であるカゼインを酸で沈殿させたものだから、牛乳よりもその含有割合が多くなっていても不思議ではないし、

カゼインホスホペプチド(CPP)は、カゼインを部分加水分解して得られるホスホセリン残基を含むペプチドの総称であり、生体内でカゼインの消化により生成される。
「健康食品」の安全性・有効性情報 カゼインホスホペプチド

というから、カゼインが多ければその分体内で生成される量だって多くなるでしょう。それで、生成されたカゼインホスホペプチドがCa吸収を助けてるとか?

 もしくはこっちかなあ。

・乳糖:カルシウムをキレートして、カルシウムを可溶化させ、透過性を高める。さらに、乳糖から生成した有機酸がpHを低下させてカルシウムのイオン化を促進することによる。細胞の酸化的代謝も阻害し、透過性も増加する。*2
(『食品機能論 (ネオエスカ)』p111)

 すでに書いたように、ヨーグルトは乳酸菌を利用して乳酸を生成させて、それによってpHを下げてカゼインを沈殿させるものだから、そのときに「カルシウムのイオン化」が促進されているわけだ。だから、たとえ乳糖はなくなっていたとしても、乳糖のカルシウム吸収に寄与する一部分はいただいてたりするんだろうか。

 あと『食と文化の謎』には

ただしヨーグルトは、完全に発酵させていなければ(略)かなりの量のラクトーゼを残している。
(『食と文化の謎』p204)

ともあるから、結局のところ乳糖も残っているのかもしれない。ただそうすると、牛乳だめな人はヨーグルトもだめになっちゃうけどね。

*1:原文のまま。ほかの文章でラクターゼはラクターゼと書いてあるので、これはラクトース=乳糖のことでしょう。

*2:原文のまま。ちょっとこの文章おかしいと思うんだけど。「イオン化を促進することにより、細胞の酸化的代謝も」なのか、「(カルシウムの吸収に貢献するのは)イオン化を促進することによる」みたいな意味なのか、どちらだいこれは。