できれば自信を持って「朝食は大切」と言いたい

 朝食と学力テストの点数の関係というのはよく言われるんですが、これには大抵「朝食自身ではなく生活習慣や家庭環境の影響」が、というような注意書きがついてきます。また、その種のテストにはある程度の蓄積がものをいうでしょうから、朝食自身が脳の働きに与える影響を見るのにはあまりふさわしくないように思うのです。

 それよりも、その日の朝食を抜いた群と摂取した群とに分けて、単発的な脳の働きを見られるテストの結果でもあれば、朝食自身の影響を見るのによりふさわしいんじゃないだろうか。そんなことを思ってCiNiiってみたところ、2件それっぽいのが見つかりました。

 前者は1986年とかなり古いのですが、21-22歳の成人男子6名を対象にした試験で、クレペリンテストの結果は、

食べない群は食べた群よりも作業量が少なく、さらに誤答も高い傾向に見られたが、有意な差は見られなかった。

とのことです。

 後者は

  • 対象:女子大生18名
  • 食事内容:500kcalを摂取する群(適正食)、100kcalを摂取する群(不適正食)の二群に分け、適正食、不適正食を交互に摂取(クロスオーバー試験)
  • 課題:知能テスト(置換問題、異同弁別問題、抹消問題、計算問題、創造性問題)、クレペリンテスト

を実施したところ、

  • 有意差なし:置換問題、異同弁別問題、計算問題、創造性問題
  • 有意差あり
    • 適正>不適正:抹消問題
    • 不適正>適正:クレペリンテスト総合評価

となったそうです。

 抹消問題は

  • 「視覚的弁別の確かさと判断、反応の速さ」
  • 「注意の持続、弁別・判断、反応の速さ確かさ」

を見る問題で、クレペリンテストの総合評価は

  1. 「物事の処理能力や処理速度の傾向」
  2. 「性格や行動面でのバランスや偏り」

の2つからなるそうです。

 かたや「反応の速さ」、かたや「処理速度」と、似通っているのに反対の結果かいと思ってもう少し詳しく読んでみると、クレペリンの総合評価は不適正食群が上なのですが、わずかで有意な差ではないものの「物事の処理能力と処理速度の評価は適正食群に高い評価が見られた」とあります。速度系に関しては、適正食群のほうが優勢かもしれません*1

 計算問題や、「気力や疲労の度合い、あるいはコントロール機能の安定等」を見るクレペリンテストの後期上回率といった、朝食食べないと弱そうな部分*2で両者に差がないのがちょっと意外な感じです。

 上記二者のみを見れば、朝食と脳の働きについては、少なくとも1日などの短期においては、顕著な影響はないんじゃないかと考えられそうです。*3

*1:でもクレペリン総合評価は不適正食群の勝ち。

*2:個人的なイメージ。

*3:「んじゃ朝食いらないや」となりそうですけど、ところがどっこい、そうはならないような先行研究も「朝食摂取が持つ知的作業への影響」の後ろのほうで紹介されていますので、興味があるかたは読んでみてください。