ふたたびの、コレステロールと死亡率

 以前読もうと挙げていた「低コレステロールは死亡率を高めるか」は、やっぱりタイトルから予想されるように、「低コレステロールは死亡率を高めない」との主張だったのでした。内容のほうも食事摂取基準さまが仰る通り*1、低コレステロールは原因ではなく結果なのだということでした。

 具体的に数字を挙げれば、NIPPON DATA80をもとにした「血清総コレステロール値と総死亡のリスク比」では、総コレステロール160〜179mg/dlの総死亡リスクを1.0とした場合、160mg/dl未満の低コレステロールでは、リスクが約1.2で有意な差があるという結果になっています。ちなみに、ほかに有意差があったのは総コレステロール260mg/dl以上のリスク約1.4だけです。

 低コレステロールで死亡率が高くなる原因にはがんがあって、「血清総コレステロール値と全がん死亡のハザード比」では、血清総コレステロール160〜199mg/dlと比較して、160未満では約1.2倍、肝がんリスクに限定すれば約2.4倍と、それぞれ低コレステロールでリスクが上昇しています。これが、低コレステロールで総死亡リスクが上昇する原因となっているわけです。

 ところが、

(略)そのことから短絡的に、総コレステロール値が低いからがんが発症するという因果関係の考え方を持ち込むことは誤りであると考えている。それは、NIPPON DATA80の約1万人の対象集団は、すでに消耗性の疾患を患っている人や肝硬変の人、あるいは早期のがんである人を、追跡開始時にのぞいていないからである。

NIPPON DATA80では、肝臓疾患による死亡と5年以内の追跡早期の死亡をのぞいて検討すると、血清総コレステロール値と死亡率の関連がなくなる。

ことをグラフを用いて示しています。したがいまして、血清総コレステロール値が低いことは、原因ではなく結果なのだと、このような主張となるわけです。

それはそれとして

 しかし、肝がんばっかで、そもそも調べるきっかけだった脳出血の話は全然出てこなかったなあ。

当時の日本人の脳卒中による死亡の主原因が、低い脂肪摂取量であったことを認識しておかねばならない。(中略)血清コレステロール値が高いと心臓病死亡率が増える。しかし、血清コレステロール値が低いと、今度は脳血管疾患が増える。
(「昭和30年代の食事は、はたして模範になるか?」食の科学 No336 2006.2)

 飽和脂肪酸の摂取増加は血中LDLコレステロールを増加させ、心筋梗塞の発症を増加させる。一方、摂取が不足すると脳出血の罹患リスクを高めることも報告されている。
(「脂肪の適正な摂り方」からだの科学 249 p92)

っていうんだから、少しくらいふれられててもよさそうなものだけど。

 脳出血のリスク上昇ってのは、そんな大騒ぎするほどのものじゃないのかね。実際どの程度なんだろう。

*1:というか、食事摂取基準がこの研究結果を採用してるということなんだろうけど。