カルシウムの吸収について
先日取り上げた『最新栄養学』*1には、いくつかの食品についてのカルシウム吸収率が載っている表があるのですが、そこに載っていた白菜とブロッコリーがすごかった*2。
svサイズ(g) | カルシウム含量(mg) | Ca吸収率(%) | 吸収可能なCa量(mg)/sv | |
牛乳 | 240 | 300 | 32.1 | 96.3 |
白菜 | 85 | 79 | 53.8 | 42.8 |
ブロッコリー | 71 | 35 | 61.3 | 21.5 |
もちろん、液体の牛乳はたくさん摂ることが簡単ですが、白菜とブロッコリーはそういうわけにはいきません。表で見ても、1サービングあたりのカルシウム吸収量は、牛乳に劣っています。
でも、カルシウム吸収率がいいと言われる牛乳で32.1%なところ、50%越え、ブロッコリーに至っては60%越えです。これはかなり驚異的な数字でしょう。ちなみに、カルシウム吸収を阻害するシュウ酸を多く含んでいることで有名なほうれん草は、カルシウム吸収率が5.1%となっています。
なぜこんなに吸収効率がいいのでしょう。わからない、というのが今のところの答えのようです。
ブロッコリーのようなアブラナ科の野菜に含まれるカルシウム吸収効率が、なぜ乳製品をしのぐほど高いのかは不明である。
(p377)
で、これを見たらたいていの人は、「ちょっとブロッコリーで効率的にカルシウム摂って来る」と青果売り場に走るんじゃないかと思うんですが、『最新栄養学』は、こんな表を出しといて、食品のカルシウムの利用効率はそんなに重要じゃないと言います。
カルシウム吸収率はその溶解性が重要な影響を及ぼすという内容の文章の後で、
カルシウム補給源の溶解性は、これまでわれわれが考えてきたよりも重要性が低いかもしれない
(同上)
と言って、その理由として、だと思うのですが、カルシウム吸収を促進、または阻害するものの例を挙げます。
たとえば、シュウ酸。「最も強力なカルシウム吸収阻害物質として知られる」そうなのですが、このシュウ酸とカルシウムが結合した場合、溶解度は0.04mmol/L。ほぼ溶けなくて、その結果吸収が阻害されてしまうわけです。
同じく、カルシウム吸収を阻害するものとして有名なフィチン酸も、カルシウムと結合した場合完全には解離せず、細胞間隙を通過するには大きすぎるサイズとなってから、これまた吸収されにくくなるといいます。
大豆のフィチン酸含量が3倍になると、それに含まれるカルシウムの吸収効率は25%低下する。
(同上)
逆に、吸収を促進するものとして知られるクエン酸リンゴ酸カルシウム(CCM)は、溶解度が80mmol/L。
著しく溶解度の高いカルシウム塩は、消化管でカルシウムがリン酸塩として析出するのを阻止するか、あるいは消化管上皮のカルシウム吸収能を変化させることにより、カルシウム吸収を促進する。
(同上)
のだそうです。
で、
結論として、食事に含まれるカルシウムの評価にあたっては、吸収効率を過度に重視することなく、適切な総摂取量を確保することが重要だと言える
(p378)
と結ばれます。
いやいや、これだけ吸収効率を変化させる要因を言っておいて*3、「結論としては、吸収効率じゃなくて総摂取量を考えましょう」というのも、唐突な結論ではないか思ってしまいます。
おそらくは、「食品ごとのカルシウム吸収効率」を考えても、ほかの食品に含まれるシュウ酸だフィチン酸だ、クエン酸リンゴ酸カルシウムだカゼインホスホペプチドだ乳糖だと、まあいろいろな要因が必然的にからまってしまう。だから、食品ごとのカルシウムの吸収効率はあまり考えずに、とりあえず量を摂りましょうよ。ってことだと思うんですけど。
なんかつながりの悪さを感じる文章なのでした。
ついでにいえば
カルシウム摂取量が低い時でも、リン摂取量はカルシウム吸収にほとんど影響しない。
(『最新栄養学』p387)
とあるので、カルシウムの吸収について、リンもあまり考えなくていいのかもしれない。