アスパラガスのアスパラギン酸

疲労回復にいいよー。アスパラギン酸って、栄養ドリンクに書いてあるでしょ。アスパラガスから抽出されます」

 と言ってアスパラガスを並べている八百屋さんがいらっしゃいました。アスパラギン酸疲労回復にいいのかどうかはとりあえず置いておいて、アスパラガスを売り込むのにアスパラギン酸を出すというのは、果たして的確なのでしょうか。

 確かに、アスパラギン酸を学習する際には、小話のひとつとして、アスパラガスから抽出されたというのもセットでついて来るかもしれません。しかしながら、アスパラガスは所詮野菜です。たんぱく含有量自体がたいしたことないだろうから、たんぱく質を構成するアミノ酸の一種であるアスパラギン酸にしたところで、実際のところたいして含有していないのではないか。このような疑問が沸き起こったのでした。

 というわけで、調べてみましょう。

 食品の栄養価を調べるには「日本食品標準成分表2010」ですが、食品のアミノ酸組成を調べるのには、「日本食品標準成分表準拠 アミノ酸成分表2010」という便利なものがあります。

 これによると、アスパラガス100gあたりのアスパラギン酸量は、430mgとなっています。さて、これは多いのでしょうか、少ないのでしょうか。

 このアミノ酸成分表2010には、野菜類として43種収載されています。このなかで一番アスパラギン酸含量が多いのは「えだまめ」で1,500mg、次が「そらまめ」で1,100mgとなっています。

 「えだまめ」「そらまめ」って、そりゃあ食品分類的には「野菜」なのかもしれないけど、でも感覚的には豆でしょー。「野菜」分類でアミノ酸含量の勝負するの汚くない? とも思うわけで、「えだまめ」「そらまめ」「グリンピース*1」、あと乾物の「かんぴょう*2」を抜かした、野菜39品目のなかでアスパラギン酸含量のランキングをすると、以下のようになります。

No. 食品 アスパラギン酸(mg)
1 だいずもやし 890
2 れんこん 690
3 たけのこ 670
4 さやえんどう 470
5 ブラックマッペもやし 440
6 アスパラガス 430
7 にんにく 400
8 ブロッコリー 390
9 さやいんげん 320
10 オクラ 320
10 からし 320
10 春菊 320
10 ほうれん草(冷凍) 320

 アスパラガスは、39品目中6番目でした。確かに、野菜の中では、アスパラギン酸は多いほうであるとは言えそうです。

 では、ほかの、たんぱく質自体が多い食品のアスパラギン酸含量と比較するとどうなるのでしょうか。

 さきほど「えだまめ」と「そらまめ」を反則だとして除外したことからもわかるように、たんぱく質源と考えられる食品ほぼすべて*3は、アスパラガスよりも多くのアスパラギン酸を含んでいます。

 魚介類では、貝類のいくつかと「なまこ」「ほたるいか」を除けばすべて4桁ですし、肉類では肉の「脂身」、鶏肉の「皮」以外の食品が、卵類ではすべての収載食品が4桁です。

 ちなみに、主食としてよく食べる(=その食品から多くの栄養素を摂取するであろう)「穀類」を見ると、食パンで350mg、コッペパン360mg、フランスパン390mg、炊いたご飯(精白米)で220mgのアスパラギン酸を含んでいます。

 主食でそこそこ摂れて、主菜でがっつりと摂れるアスパラギン酸。仮に疲労回復効果があったとしても、野菜でその摂取を考えなくてもいいんじゃないかなあと、このように思ったのでした。

*1:可食部100gあたりに、アスパラギン酸620mg

*2:可食部100gあたりに、アスパラギン酸540mg

*3:「ほぼ」としたのは見落としが考えられるのと、人によってこれもたんぱく質源だろうと考える食品が違うかもしれないから。