マロニルCoAが毒性あるなら

  • 果糖はインシュリンによる制御を受けることなく、腸から肝臓へ運ばれて代謝される。果糖はまず、アセチル・コエンザイムAになり、それからクレブス回路に入る。
  • アセチル・コエンザイムAが肝臓のクレブス回路で処理し切れない場合、以下のことが起こる。
加工食品は脳を飢餓状態にし肥満をもたらすとの仮説

 解糖系でグルコースがピルビン酸になって、ピルビン酸が脱炭酸されてアセチルCoAになる。で、そのアセチルCoAがマロニルCoAになって、それがすい臓β細胞に毒性があるなら、果糖に限らずグルコースなどのほかの糖質、糖原生アミノ酸などのピルビン酸に代謝されるものや、アセチルCoAに代謝される脂肪酸だってまずい。 

 そもそもマロニルCoAってなんだっけと言えば、アセチルCoAにカルボキシル基が結合したもので、脂肪酸生合成のときに炭素鎖2個ずつくっついてくやつだ。だからエネルギー過剰状態であれば、そのエネルギー源がなんであれ、アセチルCoAを経て作られることになる。

 アセチルCoAはミトコンドリア内でTCAサイクルに入ってエネルギーを産生するけれど、脂質合成に向かうこともある。アセチルCoAはオキサロ酢酸と結合してクエン酸になって、ミトコンドリアの外に出る。

そこでCoAとATPの存在下にATP-クエン酸リアーゼによってアセチル-CoAとオキサロ酢酸に分解される。摂食が十分であればATP-クエン酸リアーゼの活性は高まる。
(『イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書27版』p219)

 摂食が十分であるとき=エネルギー充足時だ。アセチルCoAは活性が高まったATP-クエン酸リアーゼによってたくさん作られて、マロニルCoAを経て脂質合成の材料になる。

脂肪合成は過剰になったグルコースやピルビン酸、乳酸、アセチル-CoAなどの中間体を脂肪に転換するもので、摂食サイクルの同化期に起こる。(同上)

 だからなにも果糖に限らず、ピルビン酸・アセチルCoAになってエネルギー産生できるものは、みんなマロニルCoAになり得るんだ。

 ただ、上の引用文を考える上で、ここら辺がポイントなんだろうと思う。

高糖質食を十分に与えた動物ではその速度(脂質合成の速度)は大きい。熱量の摂取の制限、高脂肪食、あるいは糖尿病のようなインスリンの欠乏によって速度は低下する。(同上)

 血中の遊離脂肪酸が多い状況では、脂質合成の速度が落ちる。考えてみれば当たり前で、血中の遊離脂肪酸が多い状況っていうのはエネルギー欠乏時だ。そんなとき、悠長にエネルギー貯えにはしってどうする。だから最初の引用に戻って、さらにジュースとかで果糖いっぱいとれちゃうよって文脈を考えれば、確かにジュースなどで一度に果糖をたくさんとれば高糖質食だから、脂肪合成の速度は大きい→マロニルCoAいっぱい。ってことになる。

 しかもただ高糖質食なだけでなく、

グルコースの代わりにスクロース(ショ糖)を与えると、フルクトースは解糖の調節点ホスホフルクトキナーゼを通らずに脂質合成経路に流れるので、脂質合成が亢進する。(同 p220)

っていうんだから、よりマロニルCoAがもたらされることになる。

 ただの高血糖状態やエネルギー過剰状態の持続がではなく、マロニルCoAがβ細胞に毒性を持つなら、確かに果糖の過剰摂取は危険性を高めると言えそうだ。